【マイナーチェンジで十分?】フルモデルチェンジが長期化する明と暗 10年以上「現行型」のモデルも存在

公開 : 2021.01.19 05:45  更新 : 2021.10.22 10:13

最近フルモデルチェンジの周期が長期化しており、10年以上現行型のモデルも存在します。フルモデルチェンジを「しない」明と暗を分析します。

フルモデルチェンジの周期が長期化

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

最近フルモデルチェンジを行う周期が長期化している。

1980年代までは4年に1回の車種も多かったが、今は大半が6年前後だ。10年以上の周期もある。その代わり比較的規模の大きなマイナーチェンジが増えた。

日産エルグランド
日産エルグランド    日産

2020年にマイナーチェンジを実施した車種を見ても、フルモデルチェンジから時間を経過したケースが少なくない。日産エルグランドとマーチの登場は2010年、三菱ミラージュは2012年、レクサスISは2013年だが、フルモデルチェンジではなくマイナーチェンジで済ませた。

マツダマツダ6は2012年にアテンザとして登場した後、2018年に機能を大幅に向上させ、2019年にも2.5Lターボを加えるなど改良を実施している。三菱デリカD:5は2007年に発売され、2019年には内外装、走行性能、乗り心地、安全装備を改善して運転支援機能も加えた。

このほか発売から10年以上を経過した車種として、日産GT-R(発売は2007年)、トヨタランドクルーザー(2007年)、トヨタ・ランドクルーザー・プラド(2009年)、日産フーガ(2009年)、三菱RVR(2010年)などもある。

フルチェンジの必要性が薄れた

フルモデルチェンジの周期が長期化したり、マイナーチェンジで済ませる背景には複数の理由がある。

筆頭に挙げられるのは開発費用の削減だ。日本車は世界各国で販売されて車種数も多いが、環境性能、安全性能、自動運転技術などの対応も急務になった。開発費用の高騰で、頻繁にフルモデルチェンジするのは困難になり、マイナーチェンジで済ませる車種が増えた。

トヨタ・アルファード
トヨタ・アルファード    トヨタ

以前に比べて、マイナーチェンジで対応できる範囲が広がった事情もある。例えば今はプラットフォームや足まわりなどの解析能力が進化したから、フルモデルチェンジしなくても、運転感覚や乗り心地をかなり向上できる。レクサスISやデリカD:5などは、マイナーチェンジで走りを大幅に向上させた。

他方、デザインが伸び悩みの段階に入ったこともある。1990年頃まではデザインも成長期にあり、フルモデルチェンジすれば外観が大幅にカッコ良くなった。それが最近は、新旧モデルを並べないと見分けにくいフルモデルチェンジもある。フロントマスクに共通性を持たせる傾向の強いドイツ車はその典型だ。

とくに背の高い軽自動車やミニバンは、車内の広さを追求するから、天井の高さやピラー(柱)の角度などが自ずから決まってしまう。フルモデルチェンジしてもボディの基本デザインはあまり変わらず、フロントマスクなどの細かなところで変化をつける。

例えばトヨタ・アルファードの場合、ボディを真横から見た時の形状は、初代モデルからほとんど変わっていない。そこでフロントマスクを変化させたところ、派手にするほど売れ行きが伸びた。こうなるとフルモデルチェンジの必要性も薄れる。フロントマスクはマイナーチェンジでも大きく変えられるからだ。

以上のように最近は外観を変化させにくく、1980年代までと違ってフルモデルチェンジのたびにボディサイズを拡大することもない。コストの要請も厳しく、頻繁にフルモデルチェンジする必要性が薄れた。

その代わり可能性を広げたマイナーチェンジが増えたわけだ。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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