トヨタ、2026年より英国で『GRカローラ』生産へ 長期の納車待ちに対応

公開 : 2025.05.31 06:25

トヨタは公式声明で、『GRカローラ』の生産を英国で開始すると発表しました。GRモデルの海外生産は初。米国での旺盛な需要に対応するため、バーナストン工場で年間約1万台を追加生産すると予想されています。

海外で初のGRモデル生産

トヨタは5月30日、来年から英国で高性能ハッチバック『GRカローラ』の生産を開始すると発表した。米国での需要増加に対応する。

同社によると、現在欧州市場向けに標準のカローラを生産している英国ダービーシャー州バーナストンの工場では、GRカローラの追加生産に対応するべく昨年から準備を進めてきたという。

トヨタGRカローラ
トヨタGRカローラ    AUTOCAR

日本国外で『GR』モデルが生産されるのは初めて。トヨタは、生産設備と従業員の能力からバーナストン工場(トヨタ・マニュファクチャリングUK、TMUK)が最適だと判断したと述べた。また、英国の「モータースポーツ文化が根強い」ことも、GRのブランドに適しているとの見解だ。

バーナストン工場にはすでにカローラの車体と部品が豊富に供給されていることも、今回の決定打になったと思われる。

トヨタは、英国での追加生産は納期の短縮を目的とした、生産体制見直しの一環だと述べた。実際、GRカローラは2022年の発売以来、米国で長期の納車待ちやディーラーによるコスト上乗せに直面してきた。

目標の生産台数と投資額は後日発表される予定だが、ロイター通信は以前、バーナストン工場に4100万ポンド(約80億円)を投じて新ラインを追加し、年間1万台の生産を目指すと報じていた。

ロイター通信によると、GRカローラ、GRヤリス、GR86の生産を担当する愛知県豊田市の元町工場(いわゆるGRファクトリー)は、現在フル稼働しているという。同工場は昨年2万5000台を生産したが、そのうちの約3分の1はカローラだった。

英国でのGRカローラの生産拡大により、元町工場にはある程度の余力が生まれるだろう。例えば、GRヤリスの生産を増やしたり、新しいモデルを追加投入したりすることができるようになるかもしれない。

AUTOCARでは以前にも報じたが、トヨタの高級車ブランドであるレクサスは、来年からGT3レースシリーズに参戦する新型のフラッグシップスポーツカーを開発している。このモデルは、元町工場で組み立てられる可能性が高い。

GR部門はまた、クーペの新型セリカの開発にも取り組んでおり、MR2(2007年に生産終了)とGRスープラの後継車、そしてマツダMX-5(日本名:ロードスター)のライバル車も検討中と言われている。

英国でのGRカローラの生産拡大計画は、ドナルド・トランプ米大統領の関税措置によるものではないが、その点でもトヨタにとって間違いなくプラスとなるだろう。

米国は現在、日本を含む海外から輸入されるすべてのクルマに25%の関税を課している。しかし、英国は最近、10万台までの輸出について、関税を10%に引き下げる交渉に合意した。最終的な詳細はまだ確定していないが、現時点では、英国生産のGRカローラについては日本から輸出する場合よりも関税が低くなる見込みだ。

GRカローラは日本や米国など一部の市場でしか販売されていないが、英国生産が決まったことで、欧州市場への導入の可能性も高まった。

昨年、ドイツのニュルブルクリンクでプロトタイプによるテスト走行が確認され、欧州導入の期待が膨らんだ。トヨタの広報担当者は当時、グローバル製品をサーキットでテストすることはよくあることだと述べたが、発売の可能性は否定しなかった。

トヨタは現在、欧州でGRヤリスとGRスープラを販売しているが、GR86は欧州連合のGSR2安全規制により、欧州市場(英国を含む)から撤退した。GRスープラも間もなく販売終了となる予定だ。

バーナストン工場は1992年の開設以来、累計500万台の生産を達成している。

トヨタ・モーター・ヨーロッパの中田佳宏社長は声明で、次のように述べた。

「欧州初の工場であるTMUKが、GR車両を生産する最初の海外工場として選定され、TGRのグローバル展開プロジェクトの実現につながったことを誇りに思います。英国からの長年にわたる支援と評価に深く感謝し、今後も『Best in Town(町いちばん)』の企業として英国社会に貢献していきたい」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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