【読んでみた】「今夜は車内でおやすみなさい。」小田原ドラゴン Nバンで車中泊

公開 : 2021.01.27 05:45  更新 : 2021.10.09 23:41

王道的なストーリー+独特の雰囲気

久しぶりに読んだ小田原ドラゴン作品。

個人的には2000年代の「ヤングマガジン」掲載時以来なので、軽々と10年以上のブランクがある。

作品に登場するホンダNバン
作品に登場するホンダNバン    ホンダ

しかし、それでも絵の独特さは健在で、誰の手による作品であるかは一目瞭然だ。

ストーリーは、売れない漫画家であるシャーク小笠原(50歳)が車中泊の楽しみに気づき、クルマ(ホンダのNバン)を買って出かけ、それを漫画作品にしてゆくというもの。

この手の漫画としては、まさに王道的な展開である。しかし、普通と違うのは、主人公がモテなくて、お金もなく、孤独なオッサンであること。もちろん、できる男ではないから失敗の連続。当然、「楽しい!」や「キラキラ!」とはしていない。

そこに漂うのは、いわゆるペーソス。悲しい雰囲気だ。

しかし、一方にかすかなコミカルさもある。

人生は必ずしも成功する人だけではないという、酸いも甘いもかみ分けてきたオッサンの読者であれば、そのダメさ加減も悲しさも期待も、「そういう気持ちあるある」と、非常に親近感を味わえるはず。

ちなみに昔の作品にあった「下ネタ」はほぼなくなっている。著者も大人になったということだろう。

それと、「HOW TO」という意味では、本作にあまり期待しない方がいい……。

そもそも失敗していることが多いからだ。ただし、コラムとして車中泊専門誌「カーネル」からの「シャーク小笠原に教えたい! 車中泊入門」のページも用意されている。本気で車中泊をしようという人は、これらのコラムに注目しよう。

懐かしの作家が自伝的エッセイマンガで復活するというのは、「失踪日記」(吾妻ひでお:著)が有名だ。今回の作品も同様に、小田原ドラゴンという作家が再注目されるきっかけになるかもしれない。

今後の展開に期待したい。

記事に関わった人々

  • 鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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