【難解か否や?】フランスの高級車とは EVまで揃った「DS」の今 イッキ乗りしてみた

公開 : 2021.01.31 19:45  更新 : 2021.10.09 23:31

車格や見せびらかしではない「高級車」とは

そもそもリアシートにふんぞり返るでもない、自分でステアリングを握って街で扱いやすいサイズ感で好きなところに繰り出せる「小さな高級車」というジャンル自体、フランスの発明品だ。

その文脈でDS 3クロスバックEテンスの「リヴォリ」、つまりダッシュボードからシートまで心地よい白にモフッと包まれるインテリアを目にすると、単なるフェミニン内装ではないな、と思う。

DS 3クロスバック・グランシック(426万円:直3ターボ/130ps/オペラ内装)
DS 3クロスバック・グランシック(426万円:直3ターボ/130ps/オペラ内装)    池之平昌信

ダッシュボードの助手席側の加飾パネル部に、白いナッパレザーとダイヤモンドステッチがこの上なく効いている。

この内装のためだけに、ICEからEVに切り替える人が絶対にいる。

そもそも、EVがEVであることを主張する感覚が、DS 3クロスバックを前にすると、過去のものと思える。

Eテンスには2年前、生産直前モデルに本国でちょい乗りして以来。あの時はまだ荒っぽくバタつく感じの後車軸が、すっかり落ち着いていた。浅間から三ツ沢へ上がる登りのS字が続く区間で、加速といいアクセルを軽く抜いた時のノーズの入り方といい、素晴らしく心地よい。

第三京浜からK7経由の首都高では、ICE版と変わらぬしなやかな足まわりと、輪をかけて静かな乗り心地に舌を巻いた。抜きん出た静粛性としっとりとしたステアリングフィール、滑らかな上下動と豊かなストローク感が、ICEでもEVでもキチンと表現されているのだ。

揺らぎとなじみ、DS 7クロスバック

考えてみれば2020-2021インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、目下の絶賛を集めるプジョー208が使用するCMPプラットフォームの初出が、DS 3クロスバックだったりする。

他にもかなりのコンポーネンツを共有しているが、有りモノをギャルメイク的に「盛る」加飾ではなく、むしろコスメティックでない部分でDS 3クロスバックは、最初から高級車としてキチンと造り込まれている。
 
最後に乗ったのはDS 7クロスバックだが、サルーンのDS 9が控えているとはいえ現時点でフラッグシップだけに、やはりシートは厚みもクッションも大ぶりで柔らか。70年代のSMか時計のブレスレットのようなブロック状の意匠は、小さなレザーの継ぎ合わせでなく、仕入れが難しいであろう1枚皮で仕立てられている。

DS 7クロスバック・グランシック(589万円:直4ターボ/225ps/オペラ内装)
DS 7クロスバック・グランシック(589万円:直4ターボ/225ps/オペラ内装)    池之平昌信

ドライブモードでコンフォートを選ぶと、前方路面をカメラで読み取ってサス減衰力のアクティブ制御が始まる。昔のDSのように、といったら大袈裟だが、船のような揺らぎ感と極上の乗り心地が味わえるのは、やはりこのモードだ。

DS 3クロスバックのフットワークがハミングかスキップのようだとすれば、DS 7クロスバックのそれは、まさしくトロット。

そのリズム感と柔らかさは確かにドイツ的な高級車にはない、独特の肌なじみでもって迫って来る。

残念ながら今回は用意がなかったが、外装クロームがマットブラック仕上げでアルカンタラ内装となる「パフォーマンスライン」も、もう1つのフレンチ・ラグジュアリーの解として注目したい。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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