【動的性能x実用性能】メルセデスAMG E 53 ステーションワゴンへ試乗 マイルドHV 後編

公開 : 2021.03.14 08:25

直列6気筒、435psのマイルドHVとなるEの53。V8エンジンを積む63ほど圧倒されるパワーはないものの、角の取れた扱いやすさを英国編集部は評価します。

V8とは異なる高回転域での充足感

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
メルセデスAMG E 53の見た目からは、軽さやタイト感といた言葉は直接的に思い浮かばない。高性能なエグゼクティブ・モデルのボディサイズは、決して小さくはない。それでも、その気になれば確実なスピードで運転できる。

グリップや安定性は秀逸で、強風が吹き荒れる中でも速度を落とす必要はないと思えるほど。しかし、より速いE 63を超えないようにペースや興奮度を抑えられているような雰囲気を、ドライバーは感じるかもしれない。

メルセデスAMG E 53 4マティック+ ステーションワゴン・ナイトエディション(英国仕様)
メルセデスAMG E 53 4マティック+ ステーションワゴン・ナイトエディション(英国仕様)

このクラスのパフォーマンス・モデルとして、少し違和感のある体験ではある。だが、メルセデスAMGの場合は、更に上があるという意識を抱いてしまう。

直列6気筒ツインターボ・ユニットは、打力の強いハンマーというより、高く弾ける花火のよう。メルセデスAMGとしては、珍しい印象だ。

おそらく、電動スーパーチャージャーとISGのアシストで、出だしから豊かなトルクを期待するだろう。だが、9速ATの高い段数を保ったままでアクセルを踏み込んでも、得られる中間加速は適度に力強いと感じる程度。みなぎる勢いはない。

エンジンのレスポンスは良好で、パワーデリバリーもリニア。4000rpmを超えた辺りからサウンドは高まり、V8エンジンでは得られない滑らかさで高回転域まで吹け上がる。反面、低回転域からフルスロットルを与えても、強烈なトルクは引き出せない。

そのかわり、E 63とは異なる個性をE 53は備えている。高回転域でのパフォーマンスは爽快。シフトダウンしてエンジンを回せば、高い充足感が得られる。

E 63に対し一歩引いている感覚

ただし9速ATをDに入れっぱなしでは、エンジンとの密接な関係性は築けない。現代のATらしく、シフトアップのテンポは早め。少しその気になって運転し始めると、ちょっと段数が多すぎるように思えてしまう。

ドライブモードをスポーティな設定に変えれば、もどかしさが和らぐ。だがアクセルペダルを踏み込んでキックダウンを誘うと、1・2段多めに減速し、中回転以下のトルクの穏やかさを気付かせる。

メルセデスAMG E 53 4マティック+ ステーションワゴン・ナイトエディション(英国仕様)
メルセデスAMG E 53 4マティック+ ステーションワゴン・ナイトエディション(英国仕様)

ドライビング体験には、圧倒的な動的性能に迫っていないという感覚が残ってしまう。E 63なら、こんなことはないはずだ。

ハンドリングの訴求力や、全天候に適合する動的な洗練度でも、E 53は素晴らしい。同時にシャシーも、直列6気筒マイルドHVと同様にどこか力が引けている。

着座位置は、ライバルのパフォーマンス・モデルより高い。シートは快適で視認性にも優れるが、重心高とロール軸とのわずかなズレを感じさせる。アルファロメオ・ジュリア・クアドリフォリオやBMW M550iで知覚する以上に。

クルマがコーナーを曲がる時、ボディは外側へ傾く。それは一般的なことだ。しかしE 53では、スポーティなドライブモードを選択しても、垂直方向の動きは引き締まるものの、横方向に変化はほぼない。悪いとはいえないが、緻密な挙動とはいえない。

E 53のコーナリングはバランスに優れ、安定している。一方で取り立てて機敏とはいえず、コーナー出口に向けてパワーを掛けていっても、リアタイヤ寄りの駆動分配が強まるわけではない。

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