【ヤリスの後席】フルモデルチェンジでヴィッツより狭く 後席捨てたトヨタの目論見 

公開 : 2021.05.05 05:45  更新 : 2021.10.13 12:04

トヨタ・ヤリスの後席はヴィッツより狭くなりました。敢えて後席を重視しなかったトヨタの狙いを解説します。

勢い止まらぬトヨタヤリス

text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

トヨタを代表するコンパクトカー「ヤリス」の勢いがいい。

20万2652台をカウントした2021年度(2020年4月~2021年3月)の新車登録台数では、軽自動車も含めたランキングでナンバー1を獲得。

その20万2652台という数字は純粋なハッチバックだけでなく、基本メカニズムを共用するクロスオーバーSUVの「ヤリス・クロス」、さらにはプラットフォーム構成やボディ構造から異なる本格スポーツモデルの「GRヤリス」も加えた「ヤリスシリーズ」としてカウントしたものではある。

とはいえ、2020年2月登場のハッチバックからはじまったヤリスのスタートは大成功といえるだろう。

なぜ日本名「ヴィッツ」から「ヤリス」へ?

ところで、ヤリスの前身は3世代にわたって親しまれた「ヴィッツ」である。

そもそも日本以外の市場においては当初からヴィッツではなくヤリスと命名されており、日本におけるネーミングチェンジは「日本においても海外向けと同じ名前になった」と考えると理解しやすい。

トヨタGRヤリス
トヨタGRヤリス    トヨタ

果たして、認知度の高かったヴィッツをヤリスへと変更した理由はどこにあるのだろうか。

開発者によると3つの背景があるという。

「世界共通ネームとすることでイメージ刷新」、「ネッツ店専売車種というイメージからの脱却」、「WRC(世界ラリー選手権)を戦うモデルだと多くの人に知って欲しい」の3つだ。

ネッツ店専売云々に関しては、ヴィッツはこれまでトヨタのディーラーの中でも「ネッツ店」でしか販売されていなかったという事情がある。

しかし、ディーラー網の再編にともない2020年から全ディーラーですべてのトヨタ車を扱うようになり、ヴィッツに関しては「ネッツ店専売」というイメージを払拭するために車名を変えたというわけだ。

また、WRCに関しては、「ヤリス」という名前で参戦しており、クルマ好きはヤリスがヴィッツと同じモデルだと理解していることだろう。

一方で、一般の人には「ヤリス=ヴィッツ」という関係はイメージしづらい。

そこでWRCの日本ラウンドである「ラリージャパン」(コロナ禍で中止されたが本来は2020年からおこなわれる予定だった)の開催もあり、そこで年間タイトルを獲得するなどトップ争いを繰り広げている大活躍を日本の多くの人にも知ってもらおうと考えたのである。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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