プロサングエより2ps強力 アストン マーティン DBX S(2) 一層シリアスな新しい選択肢

公開 : 2025.10.20 19:10

ヴァルハラ由来のターボで727psを得たS 軽量化オプションで2198kg 0-100km/h怒涛の3.3秒 小さくないターボラグ シャシーバランスは完璧 一層シリアスな新しい選択肢 UK編集部が試乗

0-100km/hは怒涛の3.3秒 小さくないターボラグ

筆者がアストン マーティン DBX707を試乗したのは、数年前。新しいDBX Sの走りが、どう変化したのか比較するのは難しい。それでも、印象深いもので間違いはない。

縦に重ねられたテールパイプから聞こえる排気音は、707より大きい。ハイパワーなV8ツインターボエンジンへ期待するであろう、マッスルカー的な重厚で激しい響きが放たれる。Sでは最も穏やかなGTモードでも、少しうるさすぎると感じる人はいるだろう。

アストン マーティン DBX S(欧州仕様)
アストン マーティン DBX S(欧州仕様)

0-100km/h加速は、怒涛の3.3秒。ただし、エンジンのパワーデリバリーの影響で、727psを活用するには慣れが必要といえる。

殆どの条件でレスポンシブではあるものの、高いブースト圧でターボラグは小さくなく、回転上昇とパワー感も一致しにくい。古風な特性ながら、ドッカンターボがドラマチックなことも事実ではある。

シャシーバランスは完璧 迅速な9速AT

シャシーバランスは完璧といえる。フロントタイヤは路面を確実に捉え、ステアリングの反応は迅速で線形的。適度な重み付けで安心感に優れ、自信を高めてくれる。四輪駆動システムが生み出す、トラクションも素晴らしい。

トラクション・コントロールのトラック(サーキット)・モードも、おせっかいではない。しかし、カーブの出口が見えて右足へ力を込めても、巨大なパワーが展開されるのはストレートに入ってから、という場面はしばしば。早めの操作が求められる。

アストン マーティン DBX S(欧州仕様)
アストン マーティン DBX S(欧州仕様)

結果として、スペイン・マヨルカ島のタイトなワインディングでは、有能なシャシーを活かしきれなかった。ボディも大きい。DBX Sの実力を引き出すには、より広い環境が必要といえる。

トランスミッションは、マルチプレートクラッチの9速オートマチック。迅速にギアが切り替わり、意欲的な加速を叶えている。

姿勢制御に無駄がないGTモード

エアサスペンションは、DBX707とほぼ同じ設定にあるGTモードが、一般道との相性はベスト。スポーツやスポーツ+モードを選ぶと明確に引き締まり、乗り心地への影響が大きい。不快に感じる人もいらっしゃるだろう。

GTモードでも、姿勢制御は充分に無駄がない。エアスプリングらしく、市街地などでは僅かに落ち着きに欠けるようだが。

アストン マーティン DBX S(欧州仕様)
アストン マーティン DBX S(欧州仕様)

運転支援システムには、高機能なカスタムモードが用意されている。必要な機能だけをオンにして登録すれば、ハードボタンひと押しで、簡単にお好みの状態へ復帰できる。素晴らしい配慮だと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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