【一生モノの貴重な体験】アストン マーティン V12ヴァンキッシュ 英国版中古車ガイド

公開 : 2021.06.21 08:25  更新 : 2021.07.12 18:45

中古車価格や維持費は安くないものの、将来的な価値は高いV12エンジンの初代ヴァンキッシュ。英国編集部がその魅力をご紹介します。

生産台数はわずか2600台

text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
V12ヴァンキッシュのキーが、初めてオーナーの手へ渡ってから早いもので20年が過ぎた。オプションなしでのクーペの価格は、15万8000ポンドもした。2+2のレイアウトも選択可能だった。

2004年にパワフルなヴァンキッシュSも追加となるが、英国ニューポート・パグネルのアストン マーティン工場を旅立った初代ヴァンキッシュの数は、2007年までで2600台。この希少さが、中古車の堅調な価格を支えている。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)

英国市場を見ると、安くても6万ポンド(924万円)の値段が付いている。ベストといえる状態のV12ヴァンキッシュSなら、12万ポンド(1848万円)くらいは覚悟したい。

モンスターと呼びたくなる、5.9LのV型12気筒エンジンは、標準モデルで466psを発生。Sなら、527psを叩き出す。二度見するほどの燃費の悪さと、目を背けたくなるメンテナンス費用を知れば、お金持ちの週末用モデルに過ぎない、と想像するだろう。

だが実際は、売りに出ているヴァンキッシュの多くが8万km近い走行距離を重ねている。2003年式で、15万1200kmという例もあった。ちなみに売値は5万5000ポンド(847万円)だ。

その2003年式のオーナーによれば、過去15年ほど所有しているとのこと。アストン マーティンだと思わせる故障は何度かあったらしいが、どれも深刻ではなかったという。

「ヴァンキッシュのようなクルマは、定期的に走らせる必要があります。わたしのクルマが、それを証明しています」。と彼はコメントしている。アストン マーティンの専門ショップを営む人物も、同様のことを話していた。

ボディもエンジンも職人による手作り

ヴァンキッシュは信頼性が高く、厳しい条件下での日常的な利用にも充分耐えられるらしい。例え渋滞に巻かれて、クラッチ操作を連続しても。

V12ヴァンキッシュはアストン マーティンの歴史に新たな章を刻んだといってもいい。接着剤で組まれたアルミニウム製シャシーに、カーボンファイバー製のトランスミッション・トンネルが取り付けられた、モダンなスポーツカーだった。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)

アルミ製のボディパネルは、ブランドの伝統ともいえる、職人による手技。エンジンも丁寧に組み上げられ、担当した職人の名前が記されたプレートがあしらわれている。

手作りということは、まったく同じヴァンキッシュは2台とないということ。高い製造品質を保つため、非常に手間のかかった検査を受けて工場を旅立っている。

もし職人の仕事の結果に納得できないなら、一度アストン マーティンの専門ショップで検査を受けた方が良い。何らかの問題を抱えているのだろう。

V12ヴァンキッシュは、セミ・オートマティックを介して後輪を駆動した。このトランスミッションは、生産初期でギアのポジションセンサーに不具合が出ることが多かったものの、メカニズムとしては堅牢。

一方で英国では少なくない数のオーナーが、MTへの換装を専門ショップやアストン マーティン・ワークス社へ依頼している。喜んで作業を引き受けたらしい。

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