【アフリカの大地に勝てるか】WRCサファリ・ラリー 復活を歓迎する理由 豊かな歴史とケニアの自然

公開 : 2021.07.04 20:25  更新 : 2022.11.01 08:57

6月24日、19年ぶりとなるWRC東サファリ・ラリーが開催されました。注目を集める理由を紹介します。

ラリーの象徴的ステージ

世界で最も有名なラリーといえば?モンテカルロはもちろんだが、その次に有名なのがサファリだろう。

そのサファリが世界ラリー選手権(WRC)に19年ぶりに復活した。復活といっても、一般道ではなくクローズドのスペシャルステージを走るなど、かつてのような激しい戦いではないが、その名に恥じないものになっている。

サファリ・ラリー
サファリ・ラリー

事実上、サファリは誰にとっても真新しいイベントなのだ。現在、ランキングトップのトヨタは、サファリで素晴らしい戦歴を持っているが、ケニアでの最後の勝利は1995年にさかのぼる。

トヨタのモータースポーツ・アドバイザーであるトミ・マキネンは、サファリで2度の優勝経験がある。彼の経験とアドバイスが、6月24~27日のレースでトヨタの優位性を強固なものにした。

ヒュンダイでは、レギュラーラインナップに加えて、オリバー・ソルベルグがi20 WRCのステアリングを握ってグラベルデビューを果たす。ちょうど22年前、彼の父親であるペッターが、トーマス・ラドストロームの骨折後、土壇場でフォードのファクトリーチームに起用された。ペッターはその後、5位に入賞した。

フォードは2002年にコリン・マクレーがWRCサファリで優勝しているが、今年はガス・グリーンスミスとエイドリアン・フルモーの2人がファクトリーのラインナップに名を連ねている。

Mスポーツは、新型コロナの渡航制限により最小限の人員しか派遣されておらず、チーム代表のリチャード・ミリナーも自宅待機となっている。彼は最新の通信技術を駆使して遠隔地からチームをマネジメントすることになった。

しかし、今回のイベントで最も人気のあるドライバーは、WRC3に参戦する91歳の元欧州チャンピオン、ソビエスワフ・ザサダ氏(ポーランド)が駆るフィエスタだ。ラリーの歴史と深い関わりのある彼は、1997年以来のサファリ参戦となった。

最も「映える」ラリー?

サファリ・ラリーは、黙示録的な暑さや豪雨などの極端な天候だけでなく、目を見張るような景観も含めて、すべてが極端だ。この極端さと豊かな歴史が、レースを特別なものにしている。

キリマンジャロを背景に、マサイ族の人々が見守る中、クルマがジャンプする様子が記録された過去の映像を見ると、サファリは世界で最もフォトジェニックなラリーであることは間違いない。

サファリ・ラリー
サファリ・ラリー

かつては数百kmにも及ぶ競技区間を、一般の交通機関が行き交うオープンロードで走っていたこともあり、クルーが地元の人々と交流する場面も多く見られた。スポッターのヘリコプターとクルマが無線で結ばれ、前方の危険(象の群れなど)を知らせながら、想像を絶する悪路を走る。

このような状況に対応するために、各チームは強化ボディシェル、デイタイム・ランニングライト、水場を乗り越えるための「シュノーケル」と呼ばれる排気装置などを備えたカスタムメイドのクルマを作っていた。ダカールとキャノンボールランを掛け合わせたようなものだと思えば、イメージがつかみやすいだろう。

サファリの魅力の大部分は、基本的に「無法地帯」であるという点にあった。グループB時代には、ある有名メーカーがルートの途中でクルマを丸ごと交換して不正を働いたという伝説もあるほどだ。つまり、現代の感覚に合わせてサファリを変える必要があったのだ。

現在のサファリは、デラメア・エステートのような私有地の中を走るという、まったく異なるものになっている。しかし、ラリーの主催者は、サファリに携わっていた者が多く、オリジナルの精神に沿ったものを約束してくれた。つまり、クルマが壊れることは間違いなく、観客の中にはシマウマもいるということだ。

6月24~27にわたって繰り広げられたサファリ・ラリーの結果については、ここで深く触れることはしないが、多くのファンにとって見ごたえのあるものだったのではないだろうか。ザサダ選手も再挑戦への意欲を見せているようだ。

関連テーマ

おすすめ記事