直管マフラーの雄叫び サンビーム・アルパイン・ラリー(2) まったく違う世界観を垣間見る

公開 : 2025.11.22 17:50

高品質なモデルを安価に提供した、サンビーム・タルボ ラリーで得た知見を量産車へ イメージを上昇させた流線型ボディ 細部まで忠実にレストア UK編集部が70年前のワークスマシンをご紹介

誇らしいバンパーのナンバープレート

「このサンビーム・アルパインが現存するのは、アルペン・ラリーへ出場しなかったからでしょう。でも、自分は酷使しています。トランスミッションのリビルドは、3回目です」。と、オーナーのジョナサン・ブレイム氏が笑う。

「エンジンは頑丈ですが、トランスミッションが弱点なんです」。すべてのギアでオーバードライブが選べ、コラムシフトはオリジナル。「ケーブルでギアを切り替え、オーバードライブは電動で動作します」。と続ける。

サンビーム・アルパイン(ワークスラリーマシン/1955年式)
サンビーム・アルパイン(ワークスラリーマシン/1955年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

フロントバンパーには、RHP 700のナンバープレートが誇らしく掲げられる。ラリーに必須といえたルーカス社製のフォグランプと、ライセンスを受けたレーシングドライバーへ贈られるRACのエンブレムも誇らしい。

ボンネットのセフティーキャッチャーは、気流を乱さないよう内側。レザーバンドで固定され、激しい走りへ備えている。彼は、これで年間4000kmを過ごしているそうだ。

持久戦へ備えた内容 細部までオリジナルへ忠実

4気筒エンジンは、ルーツ・グループの別ブランド、ハンバー由来。ゼニス社製キャブレターを覆うエアクリーナーが、不自然に小さい。ホワイトのオイルレベルゲージが目立つ。プラスアースのバッテリーは、バルクヘッドの高い位置に載る。

エンジンは、チューニングに対する許容力が高かった。「ツインキャブレターも試されましたが、高地ではバランスが安定しなかったようです」。ブレイムが説明する。

サンビーム・アルパイン(ワークスラリーマシン/1955年式)
サンビーム・アルパイン(ワークスラリーマシン/1955年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

フロントガラスを温めるヒーターは、スミス社製。燃料フィルターとコイルは、2基づつ。予備の電球や点火プラグなど、持久戦へ備えた内容が見て取れる。

荷室には、スペアタイヤが2本と80Lの燃料タンクが収まる。フィラーキャップも、オリジナルへ忠実。油圧ジャッキはスウェーデン製で、探すのに数年を費やしたとか。タイヤチェーンは、箱入りの新古品を探し出したという。

アイボリーのスイッチが並ぶ華やかな内装

ボンネットが長く伸び、テールは先細り。フロントフェンダーのラインが、滑らかにボディへ消えていく。リアウインドウは大きい。ホワイトのステアリングホイールが、半円形のスピードメーターや、アイボリーのスイッチが並んだ華やかな内装と調和する。

「当時のマシンは、できる限りのスペアパーツを載せて走りました。アルペン・ラリーでは、外部の支援を受けることが許可されていなかったので」。ブレイムが説明する。

サンビーム・アルパイン(ワークスラリーマシン/1955年式)
サンビーム・アルパイン(ワークスラリーマシン/1955年式)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

バケットシートは、オリジナルに準じた設計で作り直されている。クロスは列車用の高耐久なもので、表面は洗浄可能。背もたれの裏には、地図や書類などをまとめられるケースが備わる。救急箱やタオル、クリップボードも、現役時代の通りだという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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