【運転が楽しいFRの純EV】BMW iX3へ英国試乗 ベースはX3 航続距離460km

公開 : 2021.09.25 08:25  更新 : 2021.10.15 13:27

SUVでも後輪駆動で運転が楽しい

加速時は、映画音楽などを手掛ける作曲家のハンス・ジマー氏がデザインした合成音が響いてくる。コンフォート・モードでは背景音としてうっすら聞こえる程度だが、スポーツ・モードを選択すると、より明確に耳へ届く。

筆者は、スピード感を効果的に高めてくれるように感じた。音色はバットモービルというより、高速列車のユーロスターへ乗った時のよう。気に入らなければ、オフにもできる。

BMW iX3 プレミアエディション・プロ(英国仕様)
BMW iX3 プレミアエディション・プロ(英国仕様)

近年の純EVの例とは異なり、iX3のステアリングホイールには回生ブレーキの強さを調整できるパドルが付いていない。ナビゲーションと車載センサーのデータをもとに、必要な回生量を自動的に判断してくれる。

もう少し長く運転すれば慣れるのかもしれないが、試乗中は効きの強さを予想できなかった。タッチモニターから強弱を3段階で選べるが、運転中に切り替えることは難しい。

シフトレバーを左に倒せばBモードになり、ワンペダル・ドライブが可能になる。これが便利かもしれない。

ボンネット内にもう1基の駆動用モーターを搭載できそうに思えるものの、286psで後輪駆動の純EVは運転が楽しい。SUVでも、目からウロコが落ちるほどに。

リアタイヤの幅は275とワイドで、トラクションに不足はない。タイトコーナーでは、リア駆動であるスタンスを隠さず勢いよく脱出できる。しかも変速の必要がないから、欲しいパフォーマンスを即座に引き出せる。

特に動的特性に優れた電動SUV

フロントタイヤへつながるドライブシャフトがなく、操舵感は自然。レシオをクイックにし、フィードバックを濃くすれば、一層感触が磨かれるだろう。

サスペンションの設定も良く詰めてあり、スプリングは快適性寄りの設定ながら、コンフォート・モードでも姿勢は程よく引き締まっている。スポーツ・モードを選べば、ボディの動きは一層小さくなる。

BMW iX3 プレミアエディション・プロ(英国仕様)
BMW iX3 プレミアエディション・プロ(英国仕様)

郊外のカーブが連続する区間との相性も良好。軽くない車重を、隠すこともないけれど。

ジャガーアウディメルセデス・ベンツといった競合モデルと比較して、英国での価格競争力は高い。Mスポーツ・プロを選択しても、iX3の方が数千ポンド(数十万円)もお手頃。四輪駆動は選べないが。

X3をベースとしたiX3は、パフォーマンスに優れた電動SUVの1台だ。ただし、SUV以外をお探しなら、4シリーズ・グランクーペから展開するi4というチョイスも悪くはないだろう。

SUVにこだわらないのなら、ヒュンダイ・アイオニック5という選択肢も英国にはある。パッケージングは優秀で、同等の実用性とパフォーマンスを備えている。ラグジュアリーさでは劣るものの、その分価格は安い。

とはいえ、ドライバーに対する訴求力で勝るのはiX3。BMWというブランドも、惹かれるポイントになり得る。

BMW iX3 プレミアエディション・プロ(英国仕様)のスペック

英国価格:6万1770ポンド(939万円/試乗車)
全長:4734mm
全幅:1891mm
全高:1668mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.8秒
航続距離:460km
電費:5.1km/Wh
CO2排出量:−
車両重量:2185kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:74kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:286ps
最大トルク:40.7kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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