【ターボの足まわりを移植】ポルシェ911 カレラGTSへ試乗 480psのライトGT3 後編

公開 : 2021.09.24 19:05  更新 : 2021.10.15 13:26

911へ追加されたGTS。現行の992型で最も甘美なハンドリングではないものの、傑出した能力の高さを英国編集部は高く評価します。

メニューは「ライトGT3」的

執筆:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回試乗した992型ポルシェ911 カレラGTSには、ポルシェ・ライトウエイト・パッケージが装備されていた。

四輪操舵システムに加えて、カーボンファイバー製バケットシートに軽量ウインドウ、空力特性を引き上げるボディキットなどが組まれる。さらにリアシートが撤去され、バッテリーも軽いものに置き換わるなど、内容はなかなかレーシーだ。

ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)
ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)

特にヴァイサッハ・バケットシートは、背もたれが固定式のスポーツシートの中で、一二を争うほどに快適。世界中の競合モデルに搭載されているシートと比べても、突出して良い。

シートの見た目は、確かにハードコアだ。でも、何の不満もなく800kmの距離を運転できるのではないかと思う。

ここまでの内容を振り返ると、カレラGTSのメニューは「ライトGT3」的に思える。ポルシェ・ディーラーとしては、人気の高いGT3を手に入れられないドライバーのための、格好のオススメ・グレードもなりそうだ。

通常の992カレラより直線は速く、コーナーではフラットで、グリップ力も高い。よりエキサイティングでありながら、しなやかな乗り心地は充分に残されている。

路上ではサーキット走行会が前提のGT3より、はるかに穏やかな乗り心地を享受できる。マナーが良く、カレラGTSはより日常的に乗りやすい。

しかもカレラSより生々しさがあり、ドラマチックさで勝る。通常の992型911に、もう少しの刺激を求めていたドライバーを喜ばせる内容だといえる。

姿勢制御はシャープに 操縦性の精度も向上

中回転域での加速力は、明確にカレラSから引き上げられている。同時に回転域を問わない柔軟性を備え、6000rpm以上まで気持ち良く吹け上がってもくれる。

アクセルペダルを踏み込んで、アクティブ・エグゾーストのフラップが全開になると、ポルシェらしいタービンの唸りが、エンジンサウンドに重なって響く。よりクリアで、聴き応えも良い。

ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)
ポルシェ911 カレラGTS クーペPDK(992型/欧州仕様)

突然アクセルペダルを踏むと、若干のターボラグも感取される。しかし、ドライバーの気持ちを鼓舞してくれる歓迎すべき音響だ。

ポルシェがシャシーへ施した変更によって、姿勢制御がシャープになり、カレラSと比べて操縦性の精度が向上。特に垂直方向のボディの動きは、印象的なほどに磨かれている。

高速道路の速度域では、確かな落ち着きを感じられる。波打ったような長めのうねりをしなやかに吸収し、優れた減衰力特性でリバウンドするような様子もまったくない。強めの入力も、GTSは見事に受け流してくれる。

ボディは上下動するものの、恐らく25mmも動いていないだろう。それでいて、アグレッシブ過ぎることもなく、揺れが残ることもない。素晴らしい設定だといえる。

GTSのシャシーが備える弱点を確かめることは、公道で許される範囲では難しい。グリップは非常に高く、ハンドリングは正確でタイト。限界領域へ近づくには、相当に積極的な運転が必要になる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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