【過去最高の中国車】ニオES8へ試乗 2021年から欧州に展開 550psと500kmの純EV

公開 : 2021.10.17 08:25

中国の新興自動車メーカー、ニオ。7シーターのSUVで、欧州市場への上陸を進めます。ES8の完成度に英国編集部は感心したようです。

中国、欧州、北米の4拠点で開発

執筆:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
現在の自動車産業のグローバル化を指し示すものとして、ニオES8ほど適したクルマはないかもしれない。ニオ社は2014年に設立された、中国の新興自動車メーカー。すでにBMWより高い企業評価を受けている。

今回試乗した7シーターのSUVは、世界4か所にニオが構える、コンピテンス・センターと呼ばれる施設で開発された。上海で構想が練られ、スタイリングを担当したのはドイツのミュンヘン。車体設計を進めたのは英国オックスフォードだ。

ニオES8(中国仕様)
ニオES8(中国仕様)

さらにソフトウエアは、アメリカのシリコンバレーで開発されている。餅は餅屋、といった感じなのだろう。

ES8のサイズは、全長5022mm、全幅1962mm、全高1756mmとかなり大柄。アウディeトロンと比べてもひと回り大きい。

ニオは2021年の9月に、ノルウェーから欧州市場への導入をスタートさせた。他にも上級EVをニオは複数用意しており、ES8はフラッグシップとして、その先鋒を担うことになる。

ES8は、純EV専用に開発されたプラットフォームをベースとする。駆動用バッテリーは100kWhと大容量。車重は2425kgと軽くないが、ボディの96%はアルミニウムで構成され、軽量化も意識している。

駆動用モーターはニオの子会社、XPT社が製造。前後に1基づつ、合計2基が搭載される四輪駆動となる。システム総合での最高出力は550ps、最大トルクは73.6kg-mと不足ない。ちなみにeトロンには、55クワトロで407psと67.4kg-mが与えられている。

航続距離は500kmがうたわれ、こちらもeトロンを凌駕する。急速充電能力は最大で90kWと、ドイツ勢の350kWと比べると遅い。

バッテリー丸ごとの交換も可能

ニオの取り組みとして興味深いのが、ノルウェーの5都市に展開予定のネットワーク・ステーションで、充電が終わったバッテリーに丸ごと交換するというもの。必要な時間は、たった3分だという。充電を待つ必要がない。

ES8には、常に最新のバッテリーが搭載できることも意味する。配達で遅延が発生しなければ。

ニオES8(中国仕様)
ニオES8(中国仕様)

大きなバッテリーはフロア下に搭載され、重心位置は低い。シャシー性能は納得できるもので、軽くない車重も良くコントロールできている。ボディの動きは漸進的に保たれ、グリップやトラクションが不足する様子もない。

ステアリングホイールに伝わる感触はほぼないが、サイズを考えればスマートにボディが向きを変える。速めのコーナリングでも、不安を感じることもない。

直進性にも優れている様子。大きなボディで正面面積は小さくないが、安定性も良好。郊外の道の運転を楽しむのではなく、高速道路をクルージングするクルマとして、印象に優れている。

乗り心地には鋭い揺れが伴うものの、不快に感じるほどではない。衝撃の吸収性や滑らかさという点では至らないが、適度なハリがあり、なだらかではない路面でも巧みに上下動を抑え込んでいるようだった。

ES8にはエアサスペンションが組まれ、セルフレベリング機能も備わる。加減速時のノーズの上下動などにも、しっかり対応していた。

走行フィーリングはドイツ車的だが、これは偶然ではない。ニオはコンチネンタル社製のサスペンションを選んでいる。アウディeトロンのように。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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