【一般道にフィットするカレラ】ポルシェ911 英国のA911号とB992号を走る 後編

公開 : 2021.10.17 09:45

最新の992型911で、英国のA911号線を目指した英国編集部。片道約230kmの旅で、シンプルなポルシェが備える素性の良さを再確認しました。

質素だがベーシックな感覚は受けない

執筆:Mike Duff(マイク・ダフ)
撮影:Max Edleston(マックス・エドレストン)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
A911号線を目指した筆者。さらにポルシェ911にまつわる道を求めて、モデルのコード番号まで広げて調べた。A991号線やA993、A996はあるものの、肝心のA992号線はないという。992型を走らせているのに。

一般道のB992号線は存在する。しかし、ここから190km離れたアバディーンシャーの町を起点としている。乗りかかった船だ。ここで終わらせるわけにもいかない。

ポルシェ911 カレラ(英国仕様)
ポルシェ911 カレラ(英国仕様)

ポルシェ911のカレラは、スコットランドの旅の印象と不思議に一致する。より価格が高くパワフルな上位グレードと比べれば質素だが、かといってベーシックな感覚は受けない。

ステアリングホイールにはドライブモードを選ぶセレクターもないし、シートの位置調整も手動。しかし、アップル・カープレイに対応するナビ付きのインフォテインメント・システムがあり、エアコンと2ステージのアダプティブダンパーも付いている。

雨が激しくなると、ウェット・モードを選択しては、とクルマが提案してもくれる。とても快適だ。

われわれは北上し、ダンディーという川沿いの町へ立ち寄る。かつてB911号線だった場所は、霧に包まれた駐車場になっていた。

もし1つ前の991型ポルシェ911にお乗りなら、ダンディーの市街地を取り囲む環状線が、A991号線。こちらをオススメしておこう。

そこからB992号線までは、速度取り締まりカメラが無数に立ち並んでいる。気持ちを鎮めて、ペースを保つ。A90号線といえば、石油労働者がサーキットのように飛ばしていた時代もあったが、遠い昔だ。

ベースのカレラに向いているB992号

さらに北のアバディーンを過ぎ、大自然が広がり始める。ポルシェの国へ辿り着いた。道路に振られた数字も、それを表している。A944号線は西に伸び、B993号線のロータリー交差点を回って、B992号線の起点へ続く。

いよいよB992号線に入る。道幅は狭い。A911号線のように、冴えないドライブになるだろうか。

ポルシェ911 カレラ(英国仕様)
ポルシェ911 カレラ(英国仕様)

そんな不安は、すぐに解かれた。アスファルトの状態は間違いなく良好。ポルシェのシャシーへ、完璧にフィットする。B992号線は開けていて見通しも良い。カレラの能力を充分に発揮できるほど、交通量や人影も少ない。

適度にタイトで、より高価で高速な911より、ベースのカレラに向いているともいえる。3.0Lの水平対向6気筒ツインターボ・エンジンを激しく回し、385psを開放する。

後輪駆動に滑りやすい路面という組み合わせは、足かせではなく、チャレンジし甲斐のあるものになる。911の素のカレラは軽く扱いやすい。2ステージのアダプティブダンパーは、隆起やワダチを通過しても、しっかり質量をコントロールしてくれる。

パワーステアリングのアシスト以上に、手のひらへは情報量の濃いフィードバックが伝わってくる。意欲的に回頭するが、気難しいところはない。

雨が降る中でもトラクションは充分。多くのクルマとは異なり、アクセルペダルで姿勢制御も行える。僅かなアクセル操作で、前後にかかる荷重を調整できる。バランスに優れた前後のグリップ力を繊細に操れる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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