ホンダ発『パスアヘッド』はムーンショットになるか? 『砂漠の砂を使う世界初の人工骨材』でアフリカの道路を整備

公開 : 2026.04.02 07:05

ホンダは3月31日、従業員の夢やアイディアを実現する『イグニション』発のスタートアップ、『パスアヘッド』設立に関する取材会を開催。世界初、砂漠の砂で人工骨材を製造するというものです。桃田健史がレポートします。

社内スタートアップ4つ目の事業化

本田技研工業(以下ホンダ)が3月31日に都内で実施した記者会見は、とても興味深い内容だった。

順を追って説明しよう。まずは、ホンダのチャンレンジスピリットを体現し、従業員の夢やアイディアを実現するためのプログラム、『イグニション』(IGNITION)についてだ。

2月に創業した『パスアヘッド』(PathAhed)でCEOを務める伊賀将之氏。
2月に創業した『パスアヘッド』(PathAhed)でCEOを務める伊賀将之氏。    本田技研工業

いわゆる社内スタートアップの観点で、本田技術研究所が2017年に社内新事業プログラムとして始めたのが起点で、2021年に起業支援プログラムとして全社展開し、2023年からは一般公募を開始している。

事業化の実績では、視覚障がい者のためのナビゲーションデバイスを開発する『あしらせ』(2021年6月設立)、倒れない3輪モビリティ『ストリーモ』(2021年8月設立)、海洋調査に貢献する小型無人ボート『ウミエル』(2025年1月設立)の3事例がある。

そして今回、4事例目として『パスアヘッド』(PathAhed)が2月に創業した。

同社CEOの伊賀将之氏は2012年に本田技術研究所に入社し、四輪ボディ用鋼材材料開発、研究や、2023年に新設された材料研究センターで新材料研究と新事業検討プロジェクトリーダーを務めてきた人物だ。

そうした中、ホンダの真骨頂である社内の『ワイガヤ』から、「アフリカが成長市場」、「砂漠の砂を利活用する技術がある」といった会話が創業のヒントになった。

アフリカ以外でも地産地消しスケールを狙う

次に、話題を砂に移す。

今、グローバルでは水の次に使用される天然資源である砂の不足が課題になっている。世界各地での建設ラッシュなどにより川砂が枯渇したり、採掘が制限される場合もあるからだ。

砂漠の砂から人工骨材『ライジング・サンド』を製造開始する。
砂漠の砂から人工骨材『ライジング・サンド』を製造開始する。    本田技研工業

一方で、社会インフラとしての道路舗装にも砕石が使われるが、道路の舗装率が特に低いアフリカでは粗悪な砕石を使用しており、結果的に1年から5年程度で道路が歪んだり大きく陥没している。

こうした現状を踏まえて、パスアヘッドは2028年にケニア共和国の自社工場で、砂漠の砂を薬剤で固めて加熱加圧することで結合させた後、均一に角ばった形状とした人工骨材『ライジング・サンド』(Rising Sand)の製造を始める。

そしてケニアを皮切りに、タンザニア連合共和国、南アフリカ共和国の順で約3年間、道路舗装に関する実証実験を行い、できるだけ早く量産化を目指す。

伊賀CEOは「アフリカのほか、中東やインドなど砂漠がある地域での地産池消が可能だ」と将来構想を語る。事業計画では売上高で2032年に200億円、2034年に430億円を狙う。

会見で登壇したインキュベイトファンドの赤浦徹代表パートナーとサイバーエージェントキャピタルの近藤裕文社長は、パスアヘッドへの投資を決めた理由について『ムーンショット』としての可能性を挙げた。

圧倒的な技術力と発想力で一気に成長する事業を指し、日本のスタートアップによる海外での成功事例は極めて少ない。そんな中、大きな期待を集めて船出したパスアヘッド。今後の動向を注視したい。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

関連テーマ

おすすめ記事