【電動のネオクラシック】エリーゼ・ベースのテスラ・ロードスター 先進企業の起源 後編

公開 : 2021.10.31 07:05

ベースのエリーゼを巧みに隠す車内

などと考えながら、テスラ・ロードスターに乗り込む。意外なほど心地よくアナログだ。インテリアは、ロータス・エリーゼをルーツとすることを、巧みに隠している。

押出成形のアルミシャシーは、上質なレザーやカーペットで覆われている。造形はシンプルで車内は広々。居心地が良い。シートはワイドで、ヒーターも内蔵される。エアコンを用いるより、少ないエネルギーで温まることができるためだ。

テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)
テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)

カップホルダーにグローブボックス、パワーウインドウも付いている。エリーゼより大きな荷室もある。数100kgの重さを持つ駆動用バッテリーを搭載するクルマにとって、100g程度の重さを削ることは大きな意味を持たない。

中央のモニターで、バッテリーの状態を確認できる。タコメーターのあった場所は、パワーゲージに置き換わっている。フルスロットルでマイナス200kW、ブレーキング時にプラス40kWまで、針が動く。

パワーをオンにし、センターコンソールの「D」を押す。モモ社製のステアリングホイールを握り、一気にアクセルペダルを踏み込んだ。速いと事前に知っていても、ロードスターは感動的に速い。

加速中に聞こえてくるのは、風切り音とモーターからの口笛のような音色。ドライバーの呼吸すら聞こえる。その静かさのまま、静止状態から97km/hまで3.7秒で加速する。11.1秒後には160km/hに届く。

加速が一休みする、シフトアップもない。初期のクルマには2速ギアが載っていたが、すぐに1速のボルグワーナー社製ユニットに置き換わった。

コーナーに差し掛かれば馴染みのある感覚

「V8エンジンのようなビートは放ちません。でもアクセルペダルを踏むと、後ろから刺激的なノイズが聞こえます。大パワーが放たれている、という感覚を与えてくれます。単に静かな体験ではありません」。とファーガソン。

強烈な加速にエリーゼとの小さくない違いを体感するものの、コーナーに差し掛かれば、馴染みのある感覚が戻ってくる。手のひらで握っているのは、感覚の豊かな、小さなステアリングホイールだ。

テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)
テスラ・ロードスター(2008〜2012年/英国仕様)

195/50という16インチの細いフロントタイヤから、情報が届けられる。脳みそと直結するかのように、機敏に回頭する。子犬のような振る舞いで、ロータスのように打ち解けた相棒になれる。

テスラは、ロードスターをエリーゼから遠ざけようと努力したかもしれない。だが、実際に運転して感じることは、ベース・モデルから受け継がれたDNA。単にスリリングな加速を楽しむ以上に、そのスピードを一般道で展開できる。

エリーゼと同じではない。ドライバーの後ろには11枚のシートに分かれた、450kgのリチウムイオン・バッテリーがある。その結果、ロードスターは現代のエリーゼ比で40%も重い。

ブレーキング時は特に車重を実感する。ロードスターでは4ポッド・キャリパーへのアップグレードが人気の理由も、よくわかる。ペースを速めるほど、コーナーでは荷重移動を感じ取ることもできる。

乗り心地は上質。振動音は小さく、揺れは穏やか。路面の隆起部分なども、しなやかに受け止める。主導調整式のサスペンションが、最もハードな状態に設定されていても。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アラステア・クレメンツ

    Alastair Clements

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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