メルセデス・ベンツE400 AMG スポーツプラス・クーペ

公開 : 2014.05.07 22:35  更新 : 2017.05.23 17:15

■どんなクルマ?

E400 AMGスポーツ・プラスは新しくなったメルセデス・ベンツEクラス・クーペのフラッグシップ・モデルである。

熱心なドライビング愛好家に対して、334psと44.9kg-mのトルクを発生するツインターボ3ℓV6エンジンを唯一採用したモデルだということを強くアピールする。

しかしながら、大まじめなクーペに、熱いエンジンをポンっと置き換えただけには終わらず、電子制御可変ダンパーやスロットル・レスポンスの向上、トランスミッション校正のオプションを含む ”ダイナミック・ハンドリング・パッケージ” にて武装している。

AMGスポーツ・プラス・パッケージを選択すれば更に、19インチ・アロイ・ホイール、リア・スポイラー、スポーツ・シート、赤いステッチをあしらったAMGステアリングが追加される。

標準装備は包括的で、685万円なる価格には衛星ナビゲーション・システム、DABラジオ、クルーズ・コントロール、自動ワイパー、自動ライト、前後パーキング・センサー、自動防眩ミラー、ブルートゥース接続、ハーマン・カードン製14スピーカー・サウンド・システムが含まれる。

■どんな感じ?

速い。疑いの余地なく、速い。0-100km/h加速は5.2秒、最高速度は250km/hにのぼる。

334psの3ℓV6エンジンは、44.9kg-mのトルクを1400-4000rpmで発生するため、低速から溢れんばかりの力強さを発揮し、回転上昇に伴ってさらにトルキーになる。

4000rpmより上ではV6エンジンが唸り声を上げ、6400rpmまで突き抜けていく。エキゾースト・ノートの印象はよく下品ではない教養ある音を聴くことが出来る。アクセルを踏み込むと、意図的な吠え方をするゆえ、Eクラスのキャラクターとは些かのギャップを感じる。

市街地をドライブしてみると、メルセデスの7スピード・オートマチック・ギアボックスは実用的な良い仕事をしてくれるものの、マニュアル操作をする際にはすこしシステムが迷いがちで不快なタイムラグが生じる。

熱狂的なドライバーにとっては、スタビリティ・コントロールが常に介入してくる事に不満を感じることがあるかもしれない。合流点からの脱出時や、滑りやすい路面で思わずタイヤを空転させてしまった際に、イラッとする警告音と共に、車体を震わせながら介入してくるさまは、あまり喜ばしいとはいえない。確かに、ドライバーを危険に晒したくないことは理解できるけれども。

ハードな走行時にもメルセデスの自己矛盾が垣間見れる。テストと撮影に走らせた際の燃費は8.5km/ℓ。ただし、日常的な使用においては、12.6km/ℓ程度までは引き上げることが可能なはずなので、毎日の通勤の足かせになることは無さそうだ。

ひとつ、ハンドリングに関して。これは最も悪印象で、正確でかつ簡単にライン取りができるものの、退屈で仕方ない。鈍く、首尾一貫性のある手応えに欠ける印象だ。スポーツ・モードにスイッチした際の高速走行では、AMGスポーツ・プラスの影響も相まって落ち着きもあり、ドライブのやりがいがあった。ただし、ごくまれではあったが。

あなたが想像されるように、本質的によりアグレッシブになったメルセデスは、乗り心地と改良においても妥協点が浮き彫りになっている。ダンパーをコンフォート・モードにした際でさえもドスドスと路面の凹凸を伝えてくるし、バタバタと割れ目が目立つ路面を突き進む。ロードノイズも入ってくるが、風切り音はとても小さい。

外観は2009年にフェイス・リフトした先代に比べて大きくモダンになったものの、インテリアはそれほど進化していない上、現行のSクラスと比べると明らかな遅れをとっている。インテリアの選択肢は豊富にあるがレザー仕立てのダッシュボードも、価格の割にあまりパッとしない。

またシートも些か大きすぎ、人間工学的な欠点が目立つ。その上、最適なドライビング・ポジションを見つけ出すことも難しい。我々がテストされた車両が特別だったことを祈るけれど、段差を乗り越えるためにプラスチック素材からカタカタと異音が聞こえることもあった。

ロング・ホイールベースと言うこともあり、実用的なクーペらしき雰囲気はあるものの、後部座席の居住環境も特に良いとはいえない。足元の余裕はわずかにあるが、背の高い人ならフロントシートの背面のプラスチック素材に常に圧迫されることは避けられない。

180cmを超える人なら前かがみの心地悪い姿勢を強いられるし、そうでもしなければ天井に頭を当てたまま座っていなければならない。それ故に、大人はこのクルマに乗る際には、我慢強さを試されることになるだろう。

インテリアについてのワルクチはまだまだあるけれど、視界は良好。2ドア特有の長いドアは過度に重くなく、リアシートへのアクセスも素早く楽なものだった。

トランク・ルームの大きさはこの手のクルマとしては適切なサイズで、大きめの旅行カバンも簡単にしまうことが出来る。メルセデスの好評する450ℓというサイズは、ディメンションが似通ったBMW4シリーズ・クーペよりも5ℓ大きい結果となる。

その上、全く無用の長物であるパンク修理キットを廃しスペア・タイヤをも備えているというのだから大したものである。

■「買い」か?

おそらく、ノーである。あまりにも混乱を招きやすいポジションであることは事実である。クーペとしての実用性は△。では、走りはどうか? 熱い走りをする気にはなれない。△である。ただし大きなEクラスに高回転までよどみなく回るV6エンジンは最高の組み合わせである。

もし、運転のやりがいがある高級志向のクーペが本当に欲しいと思うなら、最近投入されたBMW4シリーズの購入をおすすめする。

即座にEクラス・クーペの代わりになるかと言えばそうではないけれど、よりシャープなルックスと、運転する楽しさ、心地よさ、そして内装のスペースを兼ね備えていることは紛れもない事実である。その上モダンでかつ、数ポンド安い。

それでもなお、あなたが本気で購入を考えているのであればE350ブルーテック・ディーゼルの方をおすすめする。スポーティーさと、V6エンジンは諦める必要があるがそれでもなお良いクルマである。それに£42,440(628万円)という価格は£3,825(57万円)の節約にもなるのだから!

ディーゼル・エンジンは現代に馴染んできた上、なんといっても品位のあるEクラスにもぴったりである。21.4km/ℓという燃費もランニング・コストを考えるという点で少なからず魅力的なはずだ。航続距離だって880kmから1177kmまで伸びるのだから。

スリー・ポインテッド・スターのついた大きなクーペが欲しいという特別な拘りが無い限り、何か他のクルマを探すことをおすすめする。

(ルイス・キングストン)

メルセデス・ベンツE400 AMG スポーツプラス・クーペ

価格 £46,265(685万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 5.2秒
燃費 16.0km/ℓ
CO2排出量 176g/km
乾燥重量 1725kg
エンジン V型6気筒2996ccツインターボ
最高出力 334ps/5500rpm
最大トルク 44.9kg-m/1400-4000rpm
ギアボックス 7速オートマティック

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