直6かV8かで1杯呑める? メルセデス・ベンツ W111型カブリオレ(1) 縦積みのバンパーとライト

公開 : 2025.04.27 17:45

フィンテールがベースのW111型クーペとカブリオレ 280 SE 3.5は220 SEbの2倍のお値段 縦に重なったバンパーとヘッドライト 戦後の雰囲気を漂わせる内装 英編集部が2台で魅力を再確認

280 SE 3.5は220 SEbの2倍のお値段

傑作と呼ばれるモデルでも、中古車になれば1度は価値が大きく下がる場合が多い。しかし、それに当てはまらないモデルもある。1970年の新車当時、7249ポンドだったメルセデス・ベンツ280 SE 3.5カブリオレは、好例の1台だ。

4年落ちの中古車を英国で探しても、6000ポンド前後で取引されていたはず。ディーラーに並んでいた価格の、8割以上は保たれていた。同時期のアストン マーティンDB6 ヴォランテなら、7割を切っていたことだろう。

左からメルセデス・ベンツ220 SEbカブリオレと、280 SE 3.5カブリオレ
左からメルセデス・ベンツ220 SEbカブリオレと、280 SE 3.5カブリオレ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

グレートブリテン島では、W111型は35台のカブリオレが売れたのに対し、クーペは225台。後者の方が、英国では遥かに人気が高かった。そのため、V8エンジンを積んだソフトトップ仕様の取引価格は、現在も希少性に応じてお高い。

今回の1台は英国の専門店、SLショップの店頭に並んでいるが、お値段は「応談」とのこと。同店には、直6エンジンのW111型220 SEbカブリオレも売られている。こちらは、14万9995ポンド(約2925万円)の値が付いているが、恐らく2倍はするだろう。

この220 SEbカブリオレは、縦に並んだ丸目のヘッドライトと、14インチ・ホイールが落ち着いた印象を与える。2024年まで、SLショップを創業したサム・ベイリー氏が愛車にしていたそうだ。

4シーター・オープンとして、魅力は間違いない。熱烈なマニアが存在し、W111型の価格は高騰傾向にある。それでも、2気筒と80馬力を諦めれば、280 SE 3.5カブリオレより現実的な価格で、殆ど同じ見た目のクラシック・メルセデスが手に入るといえる。

フィンテールがベースのクーペとカブリオレ

W111型メルセデス・ベンツの登場は、1961年。「フィンテール」と呼ばれたサルーン
がベースのクーペとカブリオレは、220 SEbから販売が始まった。リアサスペンションはスイングアクスル式で、フロントブレーキにはディスクが与えられていた。

トランスミッションは4速マニュアルも選べたが、オートマティックの方が主力で、パワーステアリングも指定できた。ルーフにはセンターピラーがなく、シャシーに補強用のクロスメンバーを追加。車重は、サルーンの220 SEより70kgほど重かった。

左から280 SE 3.5カブリオレと、メルセデス・ベンツ220 SEbカブリオレ
左から280 SE 3.5カブリオレと、メルセデス・ベンツ220 SEbカブリオレ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

非常に美しいW111型は、1950年代のW180型、通称ポントン・クーペとコンバーチブルを、合理化・現代化する目的で生み出された。戦後のメルセデス・ベンツにとって、デザインの1つの金字塔だと表現できる。

開発が始まったのは、1957年。カーデザイナーのポール・ブラック氏は、北米市場へ訴求するべくピラーレス・クーペを描き出すが、少しずんぐりとしたルーフラインは当初から提案されていたようだ。

初期のスケッチには、テールフィンも与えられていたが、メルセデス・ベンツはW111型のサルーンに与えたことを正解だとは考えていなかった。最終案が決定するのは1959年で、その時までに明確なフィンは消滅していた。

記事に関わった人々

  • マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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