BMW i8

公開 : 2014.05.07 22:50  更新 : 2017.05.29 17:59

■どんなクルマ?

BMW i8は禅の境地とも言うべきか、環境破壊とは程遠い低エミッションの電気-ガソリン自動車であり、言うなれば ”未来の” ドイツ製スポーツカーである。

コンセプトを見てみると ”何だか複雑” といったところ。周囲の言うことに耳を傾けてみると、しきりに ”スポーツカー” と ”そう簡単には忘れられない” という2つのワードが強調されているようだ。

しかし、残念ながらー予想はしていると思うけれどーその言葉どおりとはいかない。なぜならi8はそんな薄っぺらい言葉で片付くほど単純な成り立ちではないからだ。事実、信じられないほどにインパクトのあるルックスと賞賛に値する理論性で比類なき所有欲を掻き立ててくれる。そしてもうひとつの事実、£100,000(1480万円)という価格に反して、熱い一面は持ち合わせていない。

■どんな感じ?

立場としてはポルシェ918スパイダーのようなところが期待されるはずであるが、前途有望な一面も持っている。

ミニ・クーパーのそれと同じ3気筒1.5ℓガソリン・エンジンが後輪の間に据えられ、現在BMWが持ち合わせているどの内燃エンジンよりも高出力である231ps、32.6kg-mを6段ZF製ATを通じて後輪に伝える。同様に前輪には131ps、25.4kg-mを発揮する電気モーターが搭載され、2速オートマティックを介して動力を伝達する。

賢いポイントがもう一つ。本来トランスミッション・トンネルがあるべきところに電気モーターとトランスミッションが備わり、7.1kWhのリチウムイオン・バッテリーと高電圧パワー制御システムは合わせて200kgとなる。そして、その200kg分をCFRPによる軽量化によって相殺している。結果的に総重量は1540kgに抑えられ、現行モデルのポルシェ911ターボより、そして言うまでもなく918よりも軽量だ。

2速のギアは内燃機関のそれよりも幾分低い回転域ででピーク・トルクを発生し、362psと58kg-mという数値を現実的に感じることが可能だ。

車高が途方もなく低く、地を這うようなスタイリング、大げさなシザーズ・ドアを見る限り、ライバルであるランボルギーニに引けをとらない立派なスーパーカーであることを印象づける。

分厚く、高く、高価そうなサイド・シルをまたぎ低い天井の下のこれまた低いシートに体をおさめると、そこには運転の集中を促す彫刻的なダッシュボードやカラフルなLCDディスプレイが広がり、BMWの保守的なインテリアからは一線を画する非現実的とも言うべき仕掛けが随所に見られる。

まず、うるさくて、明快なところは ”うん、言うことは言うんだな” といった印象。では ”きちんとやることはやっているのか?” ではあるが、同じくらいピュアなポルシェ911と比較するとハンドリングの正確性と、ドライバーを熱くさせてくれる鋭さにおいて911に一歩譲る。ただ総合的に見て、完璧という言葉はすぐそこにまで来ているため、この市場において大成功だと言っても不足ない。

実際のドライバーに対するアピールも、本当によくやっている。コンフォート・モードにスイッチして電気のみで市街地を走らせるとごくたまにバタつく事があるものの至極快適で洗練されていた。

ステアリングは明確で、適切なフィードバックを伝達してくれ、エレクトリック・モードにおけるパフォーマンスは満足できる。電気のみでの走行は実際のところ24kmまでだったため結果として少し短い。バッテリーが満タン時でもほとんどのドライブ・モードで内燃エンジンは顕著に介入してくるため、あなたがよほどバッテリーのみの走行を望まない限りはその短い距離に悩まされないはずだ。

スポーツ・モードにした際、ほぼ絶え間なくエンジンがオンになった状態になる。アクセルを踏み込めば、パワー・トレインは大排気量のV6エンジンのごとき作りこまれた咆哮を発し、オーディオ・スピーカーを通して耳に届いてくる。

ただ、この想像上のV6エンジンの音はよりアクセルを踏み込みハイ・スピード走行をすればするほど小さくなっていく傾向があり、5000rpmあたりで一番顕著に響き渡る。またこの回転域ではより緊張感が高まり繊細なコントロールを要す。

ハンドリングは入力に対してどっしりとした反応をするようになる。ただし不明確という意味ではない。素早い反応のお陰でボディ・コントロールは非常に素晴らしく、横方向の粘り強さはより高まり、特にフロント・タイヤは路面に太い爪を食い込ませるようにして、スキール音を発生させながら突き進んでいく。

ターン・イン時も非常に聡明な動きを見せ、荷重移動をさせてステアリングを切り込んでいくと、バランスを一切崩すことなく機敏にノーズの向きを変えながら曲がっていき、並外れた運動能力を垣間見ることが出来る。

リアも常に目標とするラインを捉え続け安定感も抜群。高速コーナリング時には少しばかり、我々のステアリングやアクセル操作に対する反応が希薄で、グリップ限界は高くはないものの、もちろんそれを踏まえて運転すれば生き生きとしたドライビングが可能である。

ただし、1480万円台の楽しさかどうかと言われると “イエス” とは言えない。

■「買い」か?

あなたが、CO2排出量の軽減と拡張された経済性、刹那的な欲求のために、スポーツ性を一時犠牲にすることに加水を厭わないのであれば、「買い」ではある。また、i8のようなハイ・パフォーマンス・スーパーカーの属する市場は、どこか未来的なものにシフトしていっているということは事実である。

i8はその速さや安定性に対して”楽しい”とか”興奮”させてくれるかと言えば、そうとは言い切れない。ただし先程も書いた、経済性や環境へ配慮した、つまりは ”後ろめたくない” スーパーカーが欲しい人にとっては説得力のある選択肢になるだろう。

熱狂的な面白さは兼ね備えていないけれど、広範囲に渡る仕掛けは用意されている。ただしそのひとつひとつには、残念ながら深みが欠けている。

(マット・ソーンダース)

BMW i8

価格 £99,845(1480万円) ※£5,000(74万円)の政府助成金は含まず
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 4.4秒
燃費 57.4km/ℓ
CO2排出量 49g/km
乾燥重量 1560kg
エンジン 3気筒1499ccターボ(リア) + 131ps電気モーター(フロント)
最高出力 362ps/5900rpm
最大トルク 58.1kg-m/3700rpm
ギアボックス 6段AT(リア) + 2段AT(フロント)

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