陰キャラが陽キャラに? ポルシェ911 カレラSが大アプデ 先代GTSに並ぶ480ps

公開 : 2025.05.28 19:05

992.2型で走りの興奮度が増したカレラS 磨かれた敏捷性 先代GTSと同等の480ps 人工的な印象皆無のステアリング ブレーキはGTS譲り 直感的なインフォテインメント UK編集部が試乗

陰キャラが陽キャラに? 興奮度が増したS

ポルシェ911におけるカレラSは、少し地味な存在といえた。とにかく911を手にしたいドライバーには、不足なく謳歌できるカレラがある。より大きな予算を用意できるマニアには、軽いシャシーに6速MTを組み合わせたカレラTがある。

走りで大きなアドバンテージを求めるドライバーは、カレラGTSを指定できた。541psを発揮するT-ハイブリッドを得て、その傾向は一層強まっている。他方でカレラSは、充分な能力を備えていながら、あえて選ばれる911とは呼びにくかったように思う。

ポルシェ911 カレラS(欧州仕様)
ポルシェ911 カレラS(欧州仕様)

しかし、アップデートを受けた992.2型では、カレラSの魅力が大幅に増した。走りの興奮度が、1段引き上げられている。陰キャラだったグレードが、一転して陽キャラになったよう、というのはいい過ぎかもしれないが。

磨かれた敏捷性 先代GTSと同等のパワー

その理由は幾つかある。フロントサスペンションの改良により、敏捷性が磨かれたことが1つ。加えて、3.0L水平対向6気筒ツインターボエンジンは、30ps増しの480psを獲得。先代のGTSと同等のパワーを得ている。

0-100km/h加速は3.5秒。スポーツクロノパッケージを装備すれば、3.3秒へ短縮される。実はこれは、ATを積む現行の911 GT3より0.1秒も鋭い。加えて、そのエネルギーが放出されるプロセスも好ましい。

ポルシェ911 カレラS(欧州仕様)
ポルシェ911 カレラS(欧州仕様)

最大トルクは53.9kg-mで変わりないが、2200-6000rpmと、より広い回転域で発生するように進化。これにより、比較にならないほど扱いやすさが増している。アクセルレスポンスは即時的で、以心伝心のように豊かなトルクを引き出せる。

ポルシェとして、高域での質感は僅かに荒削り感が拭えず、標準装備されるスポーツエグゾーストの響きはさらに調律したいところ。それでも、6000rpmから7500rpmまで使い切り、余裕の加速を堪能したいという衝動へ駆られる。

人工的な印象は皆無のステアリング

ステアリングは素晴らしい。試乗車にはオプションの後輪操舵システムが組まれていたが、少なくともカレラSなら、人工的な印象は皆無。ダイレクトな反応と、素晴らしい重み付けを味わいながら、颯爽とカーブを巡っていける。

グリップ状態も把握しやすい。これで手のひらへ伝わる路面の感触が濃くなれば、一体感は一層増すはず。絶対的なグリップ力も感動モノ。意図的に操れば、幅が305あるリアタイヤをスライドできるが、推移は漸進的。濡れた路面でも、信頼感は揺るがない。

ポルシェ911 カレラS(欧州仕様)
ポルシェ911 カレラS(欧州仕様)

残念ながら、マニュアルは選べない。とはいえ、シフトパドル付きの8速デュアルクラッチATが、素晴らしい体験を担保する。カーブ侵入時のシフトダウンや、旋回途中からの加速時にシフトアップを求めると、ギアの選択を躊躇する場合があるけれど。

カレラSの場合、PASMアダプティブサスペンションが標準装備。柔らかめの設定に振れば、よほど荒れた路面でない限り、市街地では快適。起伏が多く流れの速い郊外の道では、硬めに調整することで、見事な効果を実感できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・プレスネル

    Jon Pressnell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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