1960年式ダッジ・ポラーラ 最先端だったテールフィンのフルサイズ 前編

公開 : 2021.11.27 07:05

大きいテールフィンと円形のテールライト

大きく立ち上がったテールフィンと、円形のテールライトがまっさきに目に飛び込んでくる。夕闇での加速時には、ジェット戦闘機のアフターバーナーのように、赤い残光が見えるような気がする。

ボディ後端より手前で切り落とされたテールフィンには、ポラーラのロゴマークが誇らしげにあしらわれる。今見ても色っぽい。現実離れした雰囲気には、無二の魅力が漂う。

ダッジ・ポラーラ(1960年/北米仕様)
ダッジ・ポラーラ(1960年/北米仕様)

今回ご登場願ったアクアマリンの1台は、クリス・メンラッド氏がオーナー。いかにもコストが掛かっていそうな、3段重ねのフロントバンパーだけでなく、ヘッドライトにサイドウインドウのモールまで、クロームメッキには事欠かない。

深みのある艶を湛えるボディの塗装も、感心するほど状態が良い。経年劣化で僅かにボディには緩みが見られるが、パネルには張りがある。今まで大切にされてきたことが、カタチとして表れている。

「キャサリン・レヴィさんという、未婚の方が前オーナーでした。小柄な、どこにでもいそうな女性。シアトルに住んでおり、投資銀行のメリルリンチ社で秘書を務めていたそうです」。とクリスが説明する。

「ダウンタウン近くの湖の畔に住んでおり、オフィスまではバスで通勤。現金一括で購入したと聞いています。彼女が所有した唯一のクルマで、25年間、ほとんどガレージにしまわれていたようですね」

驚くほどのオリジナル・コンディション

「多くの人が買いたいと話を持ちかけたようですが、売る気はなく、断ってきたのでしょう。彼女の死後に財産処理を進めた不動産業者によると、唯一価値のありそうな遺品だったようです」

クリスはオークションへ出品される前に、ダッジ・ポラーラを契約。走行距離は4万6000kmほど。驚くほどのオリジナル・コンディションだった。レヴィの頭髪が触れた部分は変色していたが、天井の内張りもきれいに残っていた。

ダッジ・ポラーラ(1960年/北米仕様)
ダッジ・ポラーラ(1960年/北米仕様)

車内のプラスティックは黄色く変色し、純正タイヤは空気が抜けきっていた。「ダッジ・ポラーラは、マニア垂涎の1台。何としても欲しいと思ったんです」。クリスが真剣な面持ちで話す。

一通りレストアは済ませてあるが、新たな作業が発見されたようだ。西海岸への自動車旅行で、トラブルに見舞われたという。

「プラグコードからサスペンションまで、多くの部品を交換しています。塗装も施しましたが、可能な限りオリジナルの仕上がりは残しています。独特のアクアマリン・ブルーは、各部分で色あせし、調色は難しいものでした」

「それぞれのパネルに残る色と合わせながら、塗料をブレンドする必要がありましたからね。完璧だとは思っていませんが、満足はしていますよ」

インテリアにも見とれてしまう。オリジナルのデザインだけでなく、状態も素晴らしい。

ダッシュボードはボディ色にコーディネートされた部分と、ブラシ仕上げのアルミトリムとが複雑に組み合わされている。メーターパネルの周囲には、様々な計器類とボタンが、林立するように並んでいる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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