ブガッティ・ヴェイロン16.4グラン・スポーツ・ヴィテッセ

公開 : 2012.06.08 18:50　　更新 : 2017.05.29 19:00

ブガッティ

■どんなクルマ？

ブガッティ・ヴェイロン16.4グラン・スポーツ・ヴィテッセは、世界で最も速く最も高価なオープン・モデルだ。1億7200万円という価格のつけられたモデルの心臓は、クローズド・ボディのヴェイロン・スーパースポーツに搭載されるターボチャージャーが4基取り付けられた8.0リッターW16だ。1183bhpのパワーを6400rpmで発生し、最大トルクは152.9kg-mに上る。7速のDSGギアボックスを備え、その駆動は、ハルデックス・システムを介して4輪に分配される。

最大加速Gは1.4Gに上り、0-100km/h、0-200km/h、0-300km/h加速は、それぞれ2.6秒、7.4秒、16.0秒という値をマークする。その0-100km/hのタイムは、スタンダードなヴェイロン16.4よりも0.1秒遅い。それはヴェイロン16.4グラン・スポーツ・ヴィテッセに付けられたより大きなターボがパワーとトルクを得るために時間が掛かることによる。

スタンディング・スタート1/4マイル(0-400m)加速は10.0秒、1マイル(1.6km)は25秒しかかからない。そして、減速に使われるフロントΦ400、リアΦ380のセラミック・ブレーキの制動力は更に驚きを与える。その減速Gは2.0Gで、100km/hの速度から僅か31.4mで停止する。数値的に見れば、スタンディングスティルで100-0km/hまで加速した上で停止するまでが5.9秒、0-320-0km/hが27.1秒という値だ。

■どんな感じ？

実際に乗り込んでみると、低くセットされたバケットシートはサポートに優れ、安心感をもたらしてくれることに気づく。シートに座って前方を見ると、洗練された計器類とインストルメントが目に入っている。とりわけ、カーボンとチタンで形作られたセンター・コンソールは圧巻だ。

エンジンは良い感じの魅力的なトーンを奏でるもので、生命の息吹を感じさせる。そのターボ・サウンドは、想像するようにドラゴンが怒っているようなヒューという音をたてるが、決して凶暴な感じはしない。

ヴェイロンをドライブするためのテーマとも言えるそのサウンドは、スリリングではあるが、人を怯えさせるものではなく、元気づけてくれるが、威圧的ではない。

彼らの言う”ノーマル”モードでさえ(本当に極く僅かな人のみがこれをノーマルだと言うことができる)、ピーク・トルクを迎える380km/h前後までとてつもなく恐ろしく速い加速を示す。そのパワーとトルクの出方は、ドラマティックですらある。

また、ペダルを踏み込んだ時の制動力も見事ととしか言いようがない。

ヴィテッセをドライブして驚くのは、その大きなを感じさせないことだ。そのボディ・サイズは大きいのだが、恐ろしく緻密なステアリングはワインディング・ロードでの取り扱いを楽にしてくれる。但し、フォルクスワーゲンの最高のエンジニアの手に掛かっても、状態の悪い路面でのタイヤのうなりだけは収束できなかったようだ。

オープン化されたことによる気になる乗り心地とハンドリングだが、悪影響はないようだ。脱着式ルーフを持つことによってそのボディウエイトはスーパースポーツより重くなったが、ダンパーとスプリング、そしてアンチロールバーのレートが変更されたよって速度を上げても乗り心地はしなやかなままだ。

サーキット・モードは試す機会がなかったが、高速モードでもその速さは光るものがあった。もしヴィテッセに問題があるとすれば、ドライバー・エイドをオフにした時で、その時は2トン近いボディウエイトを嫌というほど感じる、ということだ。

ヴィテッセは、ナチュラルにアンダーステアの傾向があるが、必要となれば、パワーを与えれやればその傾向を消すことができる。

■「買い」か？

あなたがこのクルマを買うだけの財力があるのであれば、早めにオーダーを入れたほうが良い。150台限定のオープン・トップ・バージョンであるヴィテッセおよびスーパースポーツには、既に1年近いウェイティング・リストが出来ているからだ。既に69台が販売され、そのうち6台がヴィテッセだという。

ダイビングを決してしない人がダイバーズ・ウォッチを買うように、ほとんどの人にとってグランド・スポーツ・ヴィテッセはそのパフォーマンスのすべてを使うことはないかもしれない。しかし、このブガッティ・ヴェイロン16.4グラン・スポーツ・ヴィテッセは、人類が造り上げたマスターピースなのだ。

(ジム・ホルダー)