フィアット128xフォルクスワーゲン・ゴルフMk8 元祖と定番の前輪駆動 後編

公開 : 2021.11.27 09:46  更新 : 2023.09.21 08:30

現代へ受け継がれてきたFFレイアウト

ゴルフには、電動パワーステアリングが備わる。シャシーにも50年間の改良が重ねられている。駆動輪が前なのか後ろなのか、通常の速度域では感取することが難しい。

一般的に穏やかに運転している限り、FFとFRとの操縦性の違いは従来ほど存在しないといっていい。だが速度域を高め、意欲的に操っていくと、128へ通じる積極的な回頭性がゴルフでも浮かび上がってくる。

レッドのフィアット128 1300CLとイエローのフォルクスワーゲン・ゴルフ 1.4 TSI eハイブリッド・スタイル
レッドのフィアット128 1300CLとイエローのフォルクスワーゲン・ゴルフ 1.4 TSI eハイブリッド・スタイル

128は、コーナリング中に路面の不整を通過すると、ステアリングホイールへキックバックが伝わってくる。フロントタイヤでクルマを引っ張り、向きを変えるという特性上、予想の範囲だ。だが、ゴルフでは見事に打ち消されている。

128が履くタイヤは、幅145という細身なもの。ゴルフには205が組まれていた。低いギアで激しく加速させると、128のステアリングホイールを握る手のひらへ、エンジンの頑張りが振動として伝わってくる。

トルクステアを打ち消すというジアコーサの課題は、フォルクスワーゲンと、そのライバルによって達成されたようだ。

50年近い時間差があるから、明確なコントラストが生まれるのは当然。それでも、FFハッチバックのベンチマーク的な地位を築いたフォルクスワーゲン・ゴルフの中には、フィアット128へ遡るDNAが宿っている。

ヴォルフスブルクの技術者が128を分解して自らのものとした、フロントエンジン・フロントドライブというレイアウト。内燃エンジンが終りを迎えようとしている時代まで、見事に受け継がれてきたようだ。

番外編:フィアット128をいま楽しむ

ロンドンの北西部、オックスフォードで30年以上もクラシック・フィアットを取り扱っている、ミドルバートン・ガレージ。多くの128にも携わってきたという。

ガレージを営むトニー・キャッスル・ミラー氏は、イギリスに古くからあるレゴのようなおもちゃ、メカノにちなんで、128をメカノカーと呼んでいる。モノコック構造ながら、分解が簡単だからだ。

フィアット128 1300CL(英国仕様)
フィアット128 1300CL(英国仕様)

128の宿敵はサビだが、フロントガラス周辺からボディへ水が侵入することで、Aピラーの付け根付近は特に錆びやすい。事前に事故歴がないかも重要。ボディに修復歴があるなら、購入はオススメしないそうだ。

一方で、エンジンは基本的にトラブルフリー。モータースポーツで活躍するほどのユニットで、5本のベアリングで支えられる堅牢なクランクシャフトを持つ。チューニングの可能性は大きいとトニーは話す。

近年は、スペアパーツの入手が難しくなっている。一般的な整備に必要な部品は生産が続いているが、サスペンション系の部品は探すのが大変な場合もあるとのこと。

もっとも、フィアット128を見つけること自体が英国や日本では難しい。状態の良い生存車両は、イタリアかドイツくらいにしかないようだ。

希少性から、最近は取引価格も上昇中。状態の良いサルーンは、英国では5000ポンド(約77万円)から7000ポンド(約107万円)くらいがスタートライン。シリーズ1で2ドアのラリー仕様なら、1万6000ポンド(約246万円)ほどへ上昇するという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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