キメラ・エボ37へ試乗 ランチア・ラリー037を復刻 4気筒ツインチャージャー 前編

公開 : 2021.12.24 08:25  更新 : 2022.11.01 08:52

ロンバルディ氏が再設計した2.2L直4

サスペンションは2種類から選べるそうだ。1つはこのオーリンズ社製を用いた、公道とサーキットを両立させた仕様。もう1つは、よりサーキットに軸足を置くTTX社製を用いた仕様。どちらを選んでも、減衰力と車高は手動で調整できる。

リアバンパーの直前には、大きなサイレンサーが付いたマフラーが鎮座する。ステンレスが熱できれいに染まっている。大きなターボチャージャーから太いパイプが導かれ、円錐形のエンドパイプへ続く。こちらも037からインスピレーションを受けている。

キメラ・エボ37(欧州仕様)
キメラ・エボ37(欧州仕様)

クラムシェルの内側でセンターを飾っているのが、4気筒エンジン。これには、フェラーリのF1チームを率いていた過去も持つ技術者、クラウディオ・ロンバルディ氏が関わっている。

彼はランチアで技術開発の責任者を務めていた時、ラリー037のパワートレイン開発に携わった。その後フェラーリへ移り、3.5L ティーポ043と呼ばれるF1用V型12気筒エンジンの開発を率いている。

それから20年後、ロンバルディはベッティに招聘され、2.2L 4気筒エンジンの再設計を依頼された。スチール製ブロックを制作し、最終的なセットアップまで面倒を見てくれたそうだ。

エンジンには鋭いアクセルレスポンスを叶えるために、電動式のスーパーチャージャーも組まれている。エボ37を力強く推進させるため、ターボチャージャーと共存している。

ツインチャージャーで420ps以上

オリジナルのラリー037は2.1L 4気筒スーパーチャージャーで、300馬力以上を発揮した。より過激なデルタS4は1.8Lのツインチャージャーで、500馬力以上を絞り出したといわれる。

このエボ37の場合、ターボブースト圧は1.5barと低い。ベッティによれば2.0barで700馬力は簡単に引き出せるというが、2万kmのテストの結果、充分にパワフルで信頼性も担保できることから、この値に留めているという。

キメラ・エボ37(欧州仕様)
キメラ・エボ37(欧州仕様)

今回、試乗を許されたエボ37の最高出力は420psに制限されていた。先代のBMW M2 CSとほぼ同じ馬力で、車重は1050kgと、それより約500kgも軽い。不足はない。

まずはベッティによるデモラン。筆者は助手席でハーネスを締める。サウンドも匂いも、本物感が強い。

アイドリング時でも、エンジンはメカニカルノイズと燃焼音が入り混じった轟音を放つ。現代のターボエンジンとは異なる音色だ。エンジンオイルが燃えた匂いが鼻を突く。このまま市販されるのかはわからないが、むしろ、このままが良いだろう。

ウォームアップが終了すると、ベッティは容赦ない。彼は2度ほど世界ラリー選手権へのエントリー経験があるそうだから、ホイールベースの短いミドシップ・マシンを思うままに振り回せることもうなずける。

ブレーキを引きずりながらのコーナリングをクルマが望んでいるかのように、機敏に動く。しかも速い。カートサーキットということで、ツインチャージャーの2.2Lエンジンを回し切れる時間はほんの僅か。直線での加速には息を呑む。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

キメラ・エボ37へ試乗 ランチア・ラリー037を復刻 4気筒ツインチャージャーの前後関係

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