米国ブランドのイタリア車、クライスラー版『ランチア・デルタ』が失敗した理由【UK編集部コラム】
公開 : 2026.04.08 17:05
フィアット・ブラーボをベースとする3代目ランチア・デルタ。洗練されたフォルムに広い室内空間、力強いエンジンを備えていましたが、英国ではなぜかクライスラーブランドから販売され、商業的には失敗に終わりました。
奇妙な運命を辿った英国向けデルタ
140年以上の歴史を持つ自動車業界なら、ヒット作を生み出す方程式を熟知していると思われるかもしれない。しかし、周知の通り、消費者の気まぐれな購買心理、限られた予算内での製品開発、歴史の重荷、経営陣の傲慢さなどが重なり、とんでもない失敗作を生み出すこともある。
少なくとも、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のクライスラー・デルタの開発費は安上がりだった。2011年に英国に上陸したのは、ランチア・デルタ(2008年発売)ではなく、そのバッジエンジニアリング版だった。

FCAの当時のトップ、セルジオ・マルキオンネ氏は、ランチアが英国市場から長らく姿を消していたこと、そして英国でのブランド再立ち上げ(計画中止)の一環としてランチア・デルタとイプシロンの右ハンドル仕様が設計されていたことを好機と捉えたのだ。
販売目標は控えめだったが、後述するように、英国の消費者の関心は無いに等しかった。しかし、数字の話は後回しにしよう。
2008年に登場したデルタは、ラリーでの大活躍によって世界的に有名になった初代デルタから数えて3代目にあたる。だが、ラリーで見せた躍動感あふれる走りは、全世代で標準のデルタが持つ、上質で洗練されたキャラクターを完全に覆い隠してしまった。
本家との目立たない「違い」
各世代はいずれもフィアットの人気モデルをベースとしている。ジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた初代デルタは、ベースのフィアット・リトモ(英国名:ストラーダ)とは良い意味で一線を画していた。2代目はフィアット・ティーポをベースとし、3代目は2007年発売のフィアット・ブラーボから派生した。
3代目デルタのボディは、ブラーボとはまったく異なるものであり、ホイールベースを100mm延長して室内空間を拡大している。しかし、内装には予算が足りず、センターコンソール、インパネ、ステアリングホイールのスポークにアルミニウム風塗装を施すという工夫で、辛うじて素性を隠しているに過ぎない。

ただし、上位のグレードにはかなり豪華なシートが採用されており、後部座席もスライド可能だ。
このような目立たない工夫や、擬似的な電子制御リミテッドスリップディファレンシャル(アンダーステア対策として前輪を個別に制御するもの)だけでは、デルタを大ヒットさせることはできなかった。
全長を100mm短縮し、ドアを2枚減らした、とてつもなくパワフルな四輪駆動のインテグラーレ版を開発していれば、状況は変わったかもしれない。しかし、FCAがこのクルマに対して行った唯一の抜本的な措置は、英国でブランド名を剥奪し、クライスラーを名乗ることだけだった。

















