ブームは一過性? 「キャンピングカー」販売 自動車メーカーの腰が重いワケ

公開 : 2022.01.22 05:45  更新 : 2022.01.22 19:58

課題は「安全性」の基準

自動車メーカーがキャンピングカーの商品企画に対して慎重な姿勢を示し続けている理由は、補償に対する課題である。

自動車メーカーが商品企画、開発、製造、販売という流れで新車を市場導入する際、車両に対して安心安全であることをユーザーに示さなければならない。

日産セレナをベースとしたキャンピングカー
日産セレナをベースとしたキャンピングカー

その中で、基本となるのは、国土交通省が所管する領域である保安基準である。

加えて、自動車メーカー各社は独自に、社内で部品や製品に対する安全や保安に関する基準を設けている。

この社内基準に対して、ベース車を架装する場合の制限がある。

簡単に表現すれば、ベース車のボディの一部を大きく切ったり貼ったりすることはご法度だ。

そのほか、走行中の安全性に関わる領域でも制約は少なくない。

自動車メーカーの社内規定に合致する範囲で、一部の正規新車販売店が「販社架装」を施したオリジナルブランドとして販売しているのだ。

こうした業界の常識に対して、ユーザー側としては「できれば、新車カタログモデルとしてキャンピングカー対応をしてくれれば、さらに安心度が増す」と考えるのは自然なことだといえる。

このような市場からのニーズが、一定数以上に達し、また一過性のブームではなく持続性があると自動車メーカーが判断すれば、新車カタログモデルとして登場するだろう。

来年以降に本格化?

2021年後半頃から、自動車メーカー直系のアクセサリー分野を担当する企業関係者の間では、キャンピングカーに対して「ブームというより、ライフスタイルとして定着するであろうことは十分に理解できた」という声が主流になってきた印象がある。

そのうえで、2023~2024年頃から、新車カタログの中でオプションパーツとしてキャンピングカーに対応しうる商品設定が増えていくだろう。

日産は東京オートサロン2022でもキャラバンをベースとしたカスタムカーを出展していた
日産は東京オートサロン2022でもキャラバンをベースとしたカスタムカーを出展していた

あわせて、新車の商用車では、キャンピングカー的な乗用へのアレンジが可能な商品企画が増えてきそうだ。

既存での代表例は、ホンダNバンであり、新規導入ではダイハツ・アトレーがある。日産ではキャラバンに対して「新しい展開」の可能性が色濃くなってきた印象がある。

真打ちである、日本版ハイエース300系については、現状では導入時期を含めて、キャンピングカー的な特別仕様車設定についての詳しい情報は、ハイエースの故郷である各務原市周辺からまだ漏れてこない。

また、乗用ミニバンのキャンピングカー仕様については、新型が発表されたトヨタノア/ヴォクシーや、ホンダ・ステップワゴンで大きな動きがなかったことは、少し残念だ。

当面は、軽を含めた商用車でのキャンピングカーへのアレンジで、自動車メーカー各社の今後の展開を注目していきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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