ACコブラの末裔 Mk IVとライトウエイト ACスーパーブロワーにAC CRS 前編

公開 : 2022.02.20 07:05

エンジンはマスタング用のV型8気筒

オリジナルと同じく、ボディはアルミニウム製。職人が手打ちで成形した40枚のパネルが、前後セクションにガス溶接されている。現代の量産車とは、比較にならないほど手間の掛かる工程を経ていた。

新車時のコブラMk IVの価格は、4万5000ポンド。現在では、12万ポンド(約1860万円)前後の価格で取り引きされている。

オートクラフトMk IV ACコブラ(1982〜1996年/欧州仕様)
オートクラフトMk IV ACコブラ(1982〜1996年/欧州仕様)

北米の型式承認をクリアするため、ダッシュボードには突起物になるトグルスイッチが備わらない。バンパーには、軽い接触時に伸縮するオーバーライダーが付いている。

V型8気筒エンジンは、フォード・マスタング用の302cu.in(4942cc)。大排気量だが最高出力は228psで、7.0Lのコブラ427が発揮する431psと比べると半分程度。車重は1190kgに仕上がっており、同等の馬力のフォード・シエラ・コスワースよりは軽い。

それでも、性格が獰猛だと聞いてきたコブラを初めて運転する筆者にとって、穏やかなMk IV ACコブラからのスタートは理にかなっている。オリジナル度も高い。

小ぶりなドアを避けて、低い位置のバケットシートへ腰を下ろす。シンプルな構造のオープンスポーツカーとしては、車内は意外なほど豪華に仕立ててある。ロールス・ロイスの内装職人が手掛けた、ケータハムのようだ。

毛足の長いパイルカーペットが、大きなトランスミッション・トンネルを覆う。シルバーのスポークで支えられたウッドリムのステアリングホイールが、陽光で輝く。ドアパネルやシート、ダッシュボードは上質なキャラメル・レーザーで覆われている。

驚くほどエネルギッシュで鋭い回頭性

黒いメーター類は、トライアンフ・スタッグから流用したような雰囲気。ハンドビルドの内装とマッチしている。反面、ウインカーやヒーターなどのスイッチ類はフォード社製で、調和していない。

左ハンドルだが、右ハンドルのコブラより足もとが窮屈に感じられる。ペダルも少し踏みにくく、積極的な運転をしようという気持ちを削ぐ。

オートクラフトMk IV ACコブラ(1982〜1996年/欧州仕様)
オートクラフトMk IV ACコブラ(1982〜1996年/欧州仕様)

キーをひねると、V8エンジンらしい荒々しい燃焼音で目覚る。実際の馬力以上に、サウンドは勇ましい。

コブラには、重たいクラッチペダルやステアリングホイールを想像するだろう。しかし発進してしまえば、ステアリングホイールは自由に回せ、クラッチペダルも扱いやすい。

初めに驚いたのは、Mk IV ACコブラが非常にエネルギッシュだということ。V8エンジンは6000rpmまで意欲的に吹け上がり、高めの速度を保って旋回できる。アクセルペダルを操れば、シャシーに適度な負荷を加えていける。

フロントノーズに軽くないエンジンを搭載していることを考えれば、回頭の鋭さは期待以上。エンジンがバルクヘッドのギリギリ、車両中心寄りの低い位置に搭載されている効果だろう。

サスペンションはソフト。ステアリングを素早く切り返すと、重心が移動し、大きくボディロールする。手に負えない蛇行を避けるためにも、荷重移動を予想した操作が求められる。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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