ACコブラの末裔 Mk IVとライトウエイト ACスーパーブロワーにAC CRS 中編

公開 : 2022.02.20 07:06

短命ながらも、傑作として語り継がれるACコブラ。その末裔と呼べるモデル4台を、英国編集部が乗り比べしました。

375psで1070kgのライトウエイト

Mk IV ACコブラは、個性豊かなクルージング・マシンだ。だが製造したオートクラフト社には、より走りにフォーカスした、収益性にも優れるモデルが必要だった。クルマを用意してくれた、レッドライン社のニール・フィッシャー氏が振り返る。

「Mk IVの販売は好調でしたが、オートクラフトでは遥かに価値の高い、オリジナル・コブラのレストアも続けていました。その2つの間に位置するコブラが必要だったんです」

オートクラフト ACコブラ・ライトウエイト(1990〜1996年/英国仕様)
オートクラフト ACコブラ・ライトウエイト(1990〜1996年/英国仕様)

その結果誕生したのが、ACコブラ・ライトウエイト。基本的にはデチューンしたMk IIIだとフィッシャーは説明する。発表は1990年。写真では、クロームメッキのリング型バンパーがフロントに備わる、ブルーのコブラだ。

車重はMk IVの1190kgから1070kgへダイエット。軽量化は、内装パネルなどにまで及んでいる。エンジンは同じ302cu.in(4942cc)のV8だが、アルミ製のシリンダーヘッドにホーリー社製の4バレル・キャブレター、触媒レスのマフラーで375psを得ている。

シャシーは、縦方向のパイプがインパクトバンパーを組み込む前提になく、両端が閉じられているという。排出ガス規制もクリアできなかったため、ライトウエイトは北米で販売されていない。収益性を求めていながら。

しかし、オートクラフト社製のコブラとしては、今でも最も高い人気を保っている。パワーだけでなく、走行性能もMk IVから大幅に引き上げられている。

速く走らせるほど一体感が高まる

その走りは、V8エンジンの存在が支配的。パワーが溢れ、スピードが急上昇する。アイドリング状態でも、高回転域を望んでいるように聞こえる。レブリミット付近まで回せば、甲高い咆哮を響かせる。

シフトレバーを動かすと、コクっと気持ちの良い手応えがある。変速したいと思わせるシフトフィールだ。

オートクラフト ACコブラ・ライトウエイト(1990〜1996年/英国仕様)
オートクラフト ACコブラ・ライトウエイト(1990〜1996年/英国仕様)

シャシーは基本的にMk IVと同じで、挙動は近いものの、洗練性が高められている。フロントへ荷重が移動した時の操舵感は、正確性を増している。キックバックが小さい。

サスペンションはまだソフトと呼べるものだが、進路変更時の姿勢制御はタイトで回頭性も良い。ブレーキも強力で扱いやすい。375psを得ていても、トラクションは良好だ。

ACコブラ・ライトウエイトを速く走らせるほど、一体感が高まり、操る自信も湧き出てくる。そんな進化版の価格は、新車時で11万ポンドだった。現在では、中古車に20万ポンド(約3100万円)前後の価格が付いている。

ライトウエイト以降の数年間、オートクラフト社はACブルックランズ・エースというモデルの開発に着手した。フォード社製のV8エンジンに、マツダMX-5(ロードスター)風のボディを組み合わせた、売れなかったオープン2シーターだ。

レッドライン社のピーター・デュケット氏が説明する。「製造に15万ポンド掛かって、5万ポンドで売るようなクルマでしたね」。オートクラフト社の未来は、見えていたようなものだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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