目指すは世界最速SUV! アストン マーティンDBX 707 試作車へ試乗 打倒カイエン・ターボGT

公開 : 2022.03.18 08:25

全体的な快適性も通常のDBXに勝る

コーナーでは、アンチロール・システムによって、ボディがほぼ水平に保たれる。それでも、パワフルでありながら背の高いSUVに乗っている不思議な感覚や、2245kgの質量を素早く動かすという、根本的な課題は隠しきれないようでもある。

タイトコーナーでは、アンダーステアが明確に出ていた。といっても、公道ではありえないような、高い負荷がフロントタイヤへ掛かった状態ではあるが。

アストン マーティンDBX 707 プロトタイプ
アストン マーティンDBX 707 プロトタイプ

同時に、オーバーステアも望み通りに引き出せる。スタビリティ・コントロールをスポーツ・モードにすると、制御が緩やかになり、驚くほど深いテールスライドを許容してくれる。もし勇気があるなら、システムを完全にオフにもできるという。

ラグジュアリーSUVの購買層が、そんな走りを好むとは考えにくい。だが、限界を超えた領域での挙動の掴みやすさは、ニュルブルクリンクを攻め込む上では大切な能力になる。

さらに現実的な速度で運転していても、大きなSUVを運転しているという、ある種の妥協のようなものも感じにくくなる。ムアースによれば、全体的な快適性でも通常のDBXに勝るそうだ。

今回はプロトタイプということで確定前だが、DBX 707の0-160km/h加速は7.4秒になるという。30年前の世界最速量産モデル、ジャガーXJ220に匹敵する加速力だ。

庶民の筆者には想像できないが、この能力はラグジュアリーSUVの市場が望むものだという。707が登場すれば、DBX全体の半数以上を占める可能性が高いらしい。

エレガントでありながらウルスより速い

ほかにもDBX 707へは、多くのアップデートが施されている。身体を固定してくれる強固なスポーツシートも獲得した。センターコンソールのデザインは見直され、ロータリースイッチによるダイナミックモード・セレクターが与えられている。

また、ダンパーとスタビリティ・コントロール、9速デュアルクラッチATのマニュアル・モードの設定を選ぶボタンも並ぶ。カーボンファイバーの折り目が美しい。

アストン マーティンDBX 707 プロトタイプ
アストン マーティンDBX 707 プロトタイプ

ダッシュボード中央のモニターは、タッチタイプではない。現在、独自のインターフェイスを鋭意開発中だという。

アストン マーティンDBX 707の英国価格は、18万9000ポンド(約2929万円)から。通常のDBXより、1万7800ポンド(約275万円)高いに過ぎない。

ボディのスタイリングやインテリアの見た目には、ランボルギーニ・ウルスのような派手さはないかもしれない。しかしエレガントな雰囲気を漂わせつつ、確実にそれより速い。

量産仕様への試乗も、4月には可能だという。続報をお待ちいただきたい。

アストン マーティンDBX 707 プロトタイプのスペック

英国価格:18万9000ポンド(約2929万円)
全長:5039mm(標準DBX)
全幅:1998mm(標準DBX)
全高:1680mm(標準DBX)
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:6.8km/L
CO2排出量:−
車両重量:2245kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:707ps/6000rpm
最大トルク:91.4kg-m/4500rpm
ギアボックス:9速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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