水素はエネルギー安全保障の「秘策」となるか 持続可能なグリーン水素の可能性は

公開 : 2022.04.03 06:05

風力発電などを利用して生成されたグリーン水素が安定的に供給されれば、エネルギー問題解決の糸口になるかも?

平和と安定を守るエネルギー安全保障 水素の可能性は?

遡ること1999年、ゼネラルモーターズの水素燃料電池のパイオニア、バイロン・マコーミックが「エネルギー安全保障」という言葉を生み出し、こう言った。「戦争さえあるかもしれない」と。その言葉は正しかった。今、持続可能なエネルギーの必要性に目を向ける時が来ている。

燃料電池のほかにも、水素燃焼エンジンの開発も徐々にではあるが、進んでいる。トヨタは水素を燃料とする内燃機関を追求し、海外の企業もそれぞれ研究開発に取り組んでいる。

エネルギー安全保障とは、市民生活や経済活動に十分なエネルギーを継続的に確保することであり、各国の重要政策課題である
エネルギー安全保障とは、市民生活や経済活動に十分なエネルギーを継続的に確保することであり、各国の重要政策課題である

過去にはポート噴射式のガソリンエンジンでも試みられたことだが、霧状の液体燃料用に設計されたエンジンで水素ガスを燃焼させると体積効率が悪く、比出力(リッターあたりの馬力)が大幅に低下し、排気ガスも多くなった。だが、直噴ガソリンエンジンや高圧縮比の特殊な燃焼室が開発されたことで研究が進んだ。

しかし、持続可能エネルギーの分野で活躍する著名な技術者や科学者の中には、電気を蓄えるには水素よりも電池の方が適していると考える人がたくさんいる。持続可能な発電を行い、そこから水素を製造し、さらにそれを圧縮するためにエネルギーを消費し、自動車に供給するというプロセスは、単に電気を作って電池に蓄えるよりもはるかに効率が悪いと指摘しているのだ。

しかし、機械的なポンプではなく、高圧水電解によって水素を圧縮することで、エネルギー方程式を改善することができるかもしれない。従来の電解機は比較的低い圧力で水素を発生させるが、高圧水電解機(2010年にホンダが初めてテスト)は、燃料電池車の圧縮水素タンクを30MPaの圧力で満たすことができる。現在では、水素燃料電池車の航続距離を従来のエンジン車と同等にするために必要な70MPaで充填できるようになっている。

エネルギー効率の向上だけでなく、運用面でのメリットもある。既存の小売店向け水素充填ステーションでは、メンテナンスにかかる時間の13%が機械式コンプレッサーに費やされているが、これを丸ごと省くことができる。

家庭用ガスとしての水素への関心も高まっており、英国では天然ガスを20%水素で希釈して使用する実証実験が進められている。Cop26では、グラスゴー~エディンバラ間の225台のバスを毎日動かすのに十分なグリーン水素を生成・貯蔵するプロジェクトが発表された。この水素は、電力大手スコティッシュ・パワー社のホワイトリー風力発電所で発電され、英ITMパワー社が製造する英国最大規模の電解機で水素に変換される予定である。

水素の大きな強みは、オフピークに発電したエネルギーを水素に変換して貯蔵できること。そのため、ホワイトリーのプロジェクトは、過去20年間話題になっていたものの、実現するには真のインセンティブを必要としていた持続可能エネルギーへのアプローチを実証するものと言える。エネルギー安全保障の急務となっている現在、求められているのはまさにこれかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。愛知県在住。幼い頃から自動車/戦車/飛行機/宇宙船など乗り物全般が大好物。いつかすべての乗り物を手に入れることを夢見ている。最近はバイクの魅力に気づき、原付と中型を衝動買いしてしまった。大学卒業後、不動産営業と記事制作ディレクターを経て2020年に独立し、フリーランスとして活動開始。現在に至る。

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