トランスアクスルの見事な操縦性 ポルシェ944 価値は堅調に上昇中 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.07.27 08:25

FRのポルシェとして賛否が別れた944。しかし、その走りは素晴らしいものだったと英国編集部は振り返ります。

ポルシェに商業的な成功を残した944

確かに944は、ポルシェとして正統なスポーツカーとはいえなかった。水平対向6気筒エンジンでもないし、リアエンジン・リアドライブ(RR)のレイアウトでもなかった。

だがそれは、重大な問題にはならなかった。生産数は16万3000台以上に達し、当時のポルシェとしては商業的に最も成功したモデルという結果を残している。

ポルシェ944(1982〜1991年/英国仕様)
ポルシェ944(1982〜1991年/英国仕様)

1982年に発表された944は、先代に当たる924のプラットフォームに改良を加え、フロントエンジン・リアドライブ(FR)のレイアウトを受け継いだ。当初のエンジンは2.5L直列4気筒の自然吸気で、最高出力163psを発揮。ずば抜けて速かったわけではない。

1986年に、220psを発揮する944 ターボが追加。0-97km/h加速5.9秒の俊足を獲得し、より優れた動力性能を求めた人を満たした。翌年には、190psの2.5L自然吸気エンジンを搭載した944 Sも加わっている。

1988年には、250psを発揮するターボSが登場。これは、近年でも最も人気の高い944といえる。

標準の944の2.5Lエンジンは、1989年に2.7Lへアップデート。同時期に3.0L 4気筒で208psを発揮する944 S2が追加され、944 ターボに迫る性能を得た。そこでターボは、それまでのターボS用の250psユニットに置き換えられた。

後期型のターボSには、専用サスペンションとクラブスポーツ・アルミホイールが装備され、差別化が図られていた。だが、それ以外の面では250psのターボと同じといえる。

944の生産は1991年に終了するが、間際にターボ・カブリオレが英国へ上陸している。その後、同じFRの968へバトンタッチした。

トランスアクスルが生むシャシーバランス

トランスミッションは、5速マニュアルと3速オートマティックが選択可能だったが、当然のように多くの人がマニュアルを選んだ。また、トランスミッションがリアデフ側に積まれるトランスアクスル構造で、ほぼ完璧といえる前後の重量配分を実現している。

その結果、944は素晴らしいFRのドライバーズカーに仕上がっていた。シャシーバランスに優れ、機敏なコーナリングを楽しめた。

ポルシェ944(1982〜1991年/英国仕様)
ポルシェ944(1982〜1991年/英国仕様)

車重は、初期の944の場合で、現在のポルシェ718ボクスターより200kgも軽い。クーペとしては悪くないサイズの、リアシートを備えていたにも関わらず。

ステアリングは正確で、重みづけも理想的。ボディロールは小さく、ワインディングを想像以上に楽しめる。サーキットでの走行会にもうってつけといえる。

乗り心地はしなやかで、インテリアも当時としては装備が充実。荷室も広く、子供が座れる2+2のシートレイアウトも備わる。長期休暇のグランドツアラーとしても適役だ。さらに高い信頼性が、より乗りやすいスポーツクーペにしてくれている。

もし興味を持ったのなら、見た目だけでなく、しっかりメンテナンスを受けてきた944を探したい。手入れが充分なら、想定外の故障に見舞われるケースは減る。普段使いできるクラシックとして、活躍するはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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