養子に迎えたフォルクスワーゲン ポルシェ944 成熟した魅力 MGBに代わる1台を選ぶ(6)

公開 : 2025.01.19 17:46

英国スポーツ・クラシックの定番:MGB 同等の予算で選べる、対抗馬的モデルは? 運転の楽しさで劣らない個性派は? ランチアにポルシェ、プジョーまで 英編集部が5台を選出

ポルシェが養子に迎えたフォルクスワーゲン

1983年に発売されたポルシェ944は、初代の日産フェアレディZダットサン240Z)以降の世界で、このカテゴリーへ求めるすべてを満たしていた。価格は比較的お手頃で、実用的でありながら、運転を不満なく楽しむことができた。

唯一の弱点といえたのが、アイデンティティが曖昧だったこと。ポルシェが養子に迎えたフォルクスワーゲン、といったイメージは当初から拭えなかった。

ポルシェ944(1982〜1992年/英国仕様)
ポルシェ944(1982〜1992年/英国仕様)

それでも、両メーカーの強みを活かし開発された944は、シュツットガルトのブランドを強力にバックアップ。一部の懐疑的な受け止め方をよそ目に、16万3000台以上がラインオフしている。今では、魅力的なクラシックカーへ成熟したといっていい。

低く構えたクーペのシルエットは、数100m離れたところから見ても、間違いなくスポーツカー。数mへ近づけば、リトラクタブル・ヘッドライトに力強く膨らんだフェンダー、テールゲートを覆うリアスポイラーなど、1980年代の鍵となる要素を観察できる。

テレダイヤル・デザインのアルミホイールに、フロントバンパーへ並ぶマーカーとフォグランプ。ポルシェのエンジンを搭載することを、静かに主張するようだ。

自ずと運転への集中力を高める運転姿勢

ドアを開くと、当時のポルシェ911から流用された、メーターパネルとシートが表れる。ピンストライプのクロスが彩りを添えるが、操作系はプラスティック製で、全体的にインテリアは質素。それが、今では好ましく感じられる。

今回ご登場願ったレッドの944は、1988年式の8バルブ。オーナーは、ポルシェへの造詣が深いジョン・メイヘッド氏だ。4スポークのステアリングホイールは、1980年代のこのブランドを象徴するアイテムだろう。

ポルシェ944(1982〜1992年/英国仕様)
ポルシェ944(1982〜1992年/英国仕様)

今日はジョンの息子、22歳のフレディ・メイヘッド氏が取材場所まで運転してきた。「乗ってすぐ、ポルシェだという違いを感じます。クルマの目的が明確。すべてが扱いやすく、長持ちしそうに作られているのが好きですね」。と魅力を語る。

「シートはとても低く、ステアリングホイールには本物の手応えがあります。クルマ全体に魅了されている感じです」

シャシーの中央へ座るような、ドライビングポジションは理想的。ゆっくり駐車場を出発する場面から、自ずと運転への集中力を高める。

カウンターウエイトが仕込まれた2479ccの直列4気筒エンジンは、たくましく滑らかに回る。トランスアクスル・レイアウトの5速MTは、ギアを選びやすい。サスペンションのストロークは長く、姿勢制御は落ち着いていながら、乗り心地は良い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    デイモン・コグマン

    Damon Cogman

    英国編集部ライター
  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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