数字だけの車名は覚えにくい? クルマの名前にまつわる研究結果が明らかに

公開 : 2022.09.28 06:25

最近の研究で、数字だけの名前よりも言葉(単語)を使った名前のクルマの方が記憶に残りやすいという検証結果が出ています。その理屈はなんとなく直感的に理解できますが、メーカーが「こだわり」を捨てることもなさそうです。

数字は覚えにくい…… けど伝統は捨てられない

Netflixのドラマシリーズ『オザークへようこそ(原題:Ozark)』に登場する機能不全の家庭に生まれた3番目の子供「スリー」を除けば、数字を名前にした人は(少なくとも英語圏では)記憶にない。筆者の英国の友人にエドガー・アンセル・ヴィンセント・マレー3世という人がいるが、「バディ」という呼び方の方が便利だ。

「言葉」や「単語」の名前は、色彩があり、意味があり、人間的な響きがあるので、単純に記憶に残りやすい。クルマの名前も同様で、最近のある研究では、車名が数字ではなく単語である場合、約2倍も思い出しやすかったという。

数字のみを採用するメリットとしては、世界的な語彙や商標の問題が少ないことなどが考えられる。
数字のみを採用するメリットとしては、世界的な語彙や商標の問題が少ないことなどが考えられる。

欧州で行われたこの研究は、SUV、小型車、ファミリーカーの3つのセグメントでそれぞれ人気のあるモデルを使い、回答者にすれ違うクルマを識別してもらうというものだった。

SUVで最も認知されたのはレンジローバー・イヴォークで47%、ボルボXC90BMW X2がそれぞれ32%。小型車では、フォードフィエスタが50%、シトロエンC1が25%、BMW 1シリーズが32%という結果だった。ファミリーカーでは、フォルクスワーゲン・ゴルフ(47%)とマツダ3(21%)が上位を占めた。

もちろん、この調査方法は、クルマのデザインや認知度も関わってくるため、荒削りな部分があることは否めない。販売台数や、道路で普段見かける頻度にも左右されるだろう。

そこで研究チームは、単語と数字の両方を用いる自動車メーカーの中で、各モデルの名前の覚えやすさを検証した。ほとんどのメーカーは、どちらかの命名法に偏る傾向があるのだが、数少ない例外としてフェラーリがある。その検証結果は、数字よりも単語の方が記憶に残りやすいという理論を裏付けるものだった。

まず、単語を用いたモデルから挙げると、エンツォは22%、カリフォルニアは13%、ラ・フェラーリは12%だった。一方、数字のモデルでは、812が9%、488が7%、F8が6%であった。

数字よりも単語の方が印象に残るという理屈は、直感的に理解しやすいだろう。数字は論理的で冷たく、ロマンチックに欠ける一方、中立的でもある。BMWの1シリーズから8シリーズのように、階層を暗示することが容易になるのだ。

単語は言語学的な問題を引き起こす可能性があり、販売する国や地域によって車名を変えることも珍しくない。三菱パジェロは、南米に生息するヤマネコに由来する名前だが、スペイン語圏ではあまりよろしくない意味合いの単語を連想させることから「モンテロ」と呼ばれているし、英国では「ショーグン」として知られている。

研究チームが1つ指摘したのは、覚えにくい数字の名前をつけると、売れなくなるリスクがあるということ。消費者の心に残りにくいからだ。

とはいえ、メルセデス・ベンツのアルファベット(AクラスGLSなど)にも同じ指摘が当てはまるかもしれないが、歴史あるブランドが伝統的かつ階層的な命名法を捨てるとは考えにくい。ポルシェが911という数字を手放すこともないだろう。911はおそらく自動車業界で最も有名な数字であり、米国の緊急通報ダイヤルと同じであることは気にする必要はなさそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ブレンナー

    Richard Bremner

    英国編集部
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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