小粒なイタリアン・スーパーカー フィアットX1/9 ガンディーニxランプレディの秀作 前編

公開 : 2022.11.06 07:05

小さなイタリアン・スーパーカー

動力性能は今ひとつでも、X1/9は小さなイタリアン・スーパーカーだったと表現して良いだろう。ルーフはタルガトップ・スタイルで簡単に取り外せ、フロント側の収納へきれいに収まった。

キャビン後方に太いBピラーが残る構造ではあったが、これは主力市場として見込まれたアメリカでカブリオレに対する規制が強化されていたため。X1/9ではロールオーバー・バーをBピラー側で兼ね、安全性を担保している。

フィアットX1/9 1300(1977年/英国仕様)
フィアットX1/9 1300(1977年/英国仕様)

強固なボディ構造とするため、乗員空間の側面には剛性の高いボックスセクション構造を採用。センタートンネルも強化されていた。アメリカで実施された新基準の80km/hによる正面衝突試験で、ボルボと一緒に合格するほどの頑丈さだった。

そんな意欲的なフィアットX1/9は、1972年に発売される。その直後に、北米市場が魅力へ気付いたのは当然といえた。1973年から1974年にかけて約3万台が生産されているが、その半数が大西洋を渡っている。

一方の欧州では同時期の中型サルーン、フィアット132への関心を高めるため、トリノ自動車ショーへの出展は見送られた。英国には正規導入の予定すら当初はなかった。MGミジェットやトライアンフ・スピットファイアに、動力性能で劣っていたためだ。

フィアットは、124 スポーツの後継モデルとしてパワフルなミドシップ、X1/20が開発中であることをアピールし、英国市場をしのいだ。これは最終的に、1975年のランチア・ベータ・モンテカルロとして量産化されている。

驚かされるX1/9の小ささ

それでも英国市場からの要望は収まらず、1977年に販売がスタート。価格は2998ポンドでトライアンフTR7より安かったが、登場から15年前後が経過していたミジェットやスピットファイアより、数100ポンド高かった。

X1/9に対して、当時の英国の自動車誌は次のように評価した。「スタイリッシュで、運転が楽しく経済的。自国の競合モデルは、登場から年月が経過しています。手頃な価格で本物のオープンエア・ドライブを楽しめます。でも、もっと大きなエンジンが欲しい」

グリーンのフィアットX1/9 1300と、ブルーのベルトーネX1/9 1500
グリーンのフィアットX1/9 1300と、ブルーのベルトーネX1/9 1500

今回は前期型に当たるシリーズ1の1300と、後期型に当たるシリーズ2の1500という2台のX1/9を、グレートブリテン島の東部、リッデン・ヒル・サーキットへお招きした。大きいエンジンの方が、本当により良いのだろうか。

ジュディ・トロウ氏は、デザインに一目惚れしてX1/9 1300を購入した1人。1977年8月に納車され、美しいボディを45年間も維持してきた。メタリック・グリーンのオリジナルカラーは、数年前に再塗装してある。走行距離は13万2000kmほどだ。

X1/9に近づくと、小ささに驚かされる。13インチのクロモドラ・ホイールが、それなりの大きさに見えてしまう。全長は3830mmで、全高も1168mmしかない。

取材日は晴れていたので、タルガトップを155Lの容量があるフロントの荷室へしまう。後方には120Lの荷室が残るから、柔らかいバッグなら数日ぶんの着替えを運べる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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