一度は復活を遂げた迷(名)車たち 後編 モーリス・オックスフォード ローバーSD1 コード810/812

公開 : 2022.11.26 07:07

コード810/812(1936年)

コフィン・ノーズと呼ばれるボートのようなフロントノーズが特徴だった、コード810と812。当時のアメリカ車では、最も技術面で挑戦的な1台だった。

1930年代にあって、フロント・サスペンションは独立懸架式。前輪駆動で、オーバードライブ付きのセミ・オートマティックを採用していた。

コード810 ビバリー(1935年〜1937年/北米仕様)
コード810 ビバリー(1935年〜1937年/北米仕様)

ボディサイドにランニングボードが残るフォルムはクラシカルだが、大きなラジエターグリルは不在。ボンネットの横からは、クロームメッキされたエグゾーストが姿を表している。リトラクタブル・ヘッドライトも、印象的な雰囲気に一役買っていた。

インテリアでは、エンジンターンと呼ばれる青海波模様のパネルがダッシュボードに与えられ、タコメーターとラジオが標準装備。最高速度は時速100マイル(161km/h)がうたわれ、高い性能も多くの人を驚かせた。

ところが、前衛的なセミ・オートマティックは信頼性が低かった。1936年から1937年までに3000台を生産したところで、コード・モーター社は倒産に追い込まれてしまう。

スタイリングは2社の独自モデルへ派生

810と812の斬新なスタイリングは多くの人の心へ響き、アメリカのグラハム・ペイジ社とハップ・モービル社の2社が権利を取得。それぞれ、ハリウッドとスカイラークとして独自モデルが生み出された。

リバイバル版は後輪駆動化され、ヘッドライトも一般的な固定式に改められていた。エンジンは直列6気筒を搭載し、明確なフロントグリルも備わっている。それでも、大きく弧を描く優雅なフォルムは確かに受け継がれている。

グラハム・ハリウッド(北米仕様)
グラハム・ハリウッド(北米仕様)

しかし、どちらも投資に見合う台数は売れないと判断。1年も経たないうちに市場から姿を消してしまった。

マニアな小ネタ:オクラホマ州に住む教師のグレン・プレイ氏は、オリジナルのスタイリングを手掛けたゴードン・ビューリッグ氏の協力を得て、8:10スケールのレプリカを製作している。コード・モーター社の名称を利用する権利も取得したという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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