運命を分けたスポーツカー ダットサン240Z(フェアレディZ) トライアンフTR6 1969年の2台 前編

公開 : 2022.12.04 07:05

繊細で現代的なダットサンのL24ユニット

トライアンフが証明したように、アメリカで成功を掴むスポーツカーに求められたのは、余裕のある排気量とシンプルなメカニズム。直列6気筒エンジンを積んだ240Zも、日本のフェアレディZは2.0Lだったのに対し、北米仕様として2.4Lが与えられた。

このL24型ユニットは、トライアンフの6気筒エンジンと多くの特徴が共通している。どちらもサルーン用をベースとするスチールブロックのシングルカムで、リバースフローの燃焼室を備える。排気量は95ccしか違わない。

ダットサン240Z(日産フェアレディZ/1969〜1973年/北米仕様)
ダットサン240Z(日産フェアレディZ/1969〜1973年/北米仕様)

だが、エンジンから得られる体験は大きく違う。今回のブリティッシュ・グリーンのトライアンフには、後に北米仕様で提供されたルーカス社の燃料インジェクションが組まれており、チョークをいじるとアイドリング時から勇ましい。

クラシカルな英国製エンジンらしく、プッシュロッドのロングストローク型。排気量の拡大はストロークの増長でまかなわれ、トルクが太い。無骨で荒々しい雰囲気と盛大なエグゾーストを放ちながら、気難しいところなく発進できる。

レッドが眩しいダットサンの6気筒エンジンは、ずっと繊細。ドラマチックさは薄いのの、遥かに現代的なユニットに思える。セルモーターと同時にすぐに目覚め、落ち着いたアイドリングを始める。

実用型といえるSOHCエンジンながら、低回転域でも滑らか。ノイズも小さく、静止時は冷却用ファンが送る風音が目立つ。発進直後から印象的なほど力強く、リニアにパワー感を高めていく。BMWのストレート6を彷彿とさせる。

50km/hでの運転ですらチャレンジング

高回転域に迫るほど、L24型ユニットは充足感のある咆哮を放ち始める。パワーがスムーズに生成され、ドライバーの気持ちをそそる。

オーバースクエアなシリンダーを備え、意欲的に走るにはトライアンフより高い回転域を必要とするが、むしろそれがうれしい。4000rpm以上で響く爽快なサウンドを長い時間堪能できる。

トライアンフTR6(1969〜1976年/英国仕様)
トライアンフTR6(1969〜1976年/英国仕様)

5速MTは、トライアンフの4速MTと同じくらい扱いやすい。変速が心地よく、6気筒エンジンの活発な回転域を保ちやすい。

比較すると、TR6は1950年代のモデルからの進化形なのに対し、240Zはまっさらな状態から設計されている。スポーツカーとして、設計思考や仕上がりは面白いほど異なる。

TR6は、50km/hでの運転ですらチャレンジング。パワーの高まりが線形的ではないうえに、硬めのサスペンションが路面の凹凸に反抗し、跳ねるような乗り心地が続く。

小径のステアリングホイールが取り付けられ、操舵にはかなりの腕力も求められる。路面変化に対して直接的に反応するため、ラインを外れないようにしっかり握っている必要もある。

とはいえ、典型的な英国郊外の道を飛ばせば、自ずと夢中になり運転へ陶酔していく。パワーは豊かだから興奮には事欠かない。挙動は完全には予想できないとしても、威勢のある加速で楽しさは巨大だ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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