運命を分けたスポーツカー ダットサン240Z(フェアレディZ) トライアンフTR6 1969年の2台 後編

公開 : 2022.12.04 07:06

同年に北米市場でのプレゼンス拡大を狙って投入された日英のスポーツカー。好対照な2台を、英国編集部が乗り比べました。

ドライバーの意思を展開しやすい240Z

S30型のダットサン240Zは、ドライバーの意思を展開しやすい。ステアリングホイールはトライアンフTR6より大きく、進路は乱されにくい。引き出しやすい馬力と滑らかな5速MT、ダイレクトで情報量の多いステアリングが組み合わさり、能力を探りやすい。

今回のレッドの240Zは北米仕様ということもあり、サスペンション・スプリングはソフトだが、コーナーで傾きすぎることもない。引き締まった操縦性を叶えつつ、タイヤをアスファルトへ押さえつけ、酷く傷んだ路面からドライバーを守ってくれる。

レッドのダットサン240Zと、グリーンのトライアンフTR6
レッドのダットサン240Zと、グリーンのトライアンフTR6

コーナリング中の不意の路面変化でも、落ち着きは失いにくい。まるで1980年代の日本車のように、懐が深く安心感が高い。飼いならす、といった表現は不要。ドライバーが望むほどに、スポーツカーとしての楽さも高まる。

この個性を生んでいる理由の1つが、ボディにある。1970年代初頭から、北米ではコンバーチブルを販売できなくなるという情報を耳にしたダットサンは、フェアレディの次期モデルをロードスターではなくクーペへ切り替えた。その結果、洗練性が追加された。

ルーフが備わることで風切り音などに悩まされることがなく、モノコックボディの剛性も高めている。グリーンのTR6はセパレートシャシーで粗野な振動までは生じないものの、比べるとソリッド感は乏しい。

とはいえ、TR6がクーペだとしたら、240Zにはない喜びが失われてしまう。トライアンフはコンバーチブルがイイ。

両車の違いが色濃く表れたインテリア

同じ1969年に北米デビューした2台だが、その後の運命は決定的に異なった。ダットサンは日産となり、6代目を大幅に改良した7代目フェアレディZが先日発表されたのはご存知の通り。

他方のトライアンフは後継モデルのTR7で失速。自動車メーカーとしても存続できなくなった。アメリカのスポーツカー市場の嗜好が、英国から日本へシフトしたことを示していた。主要な層の世代交代が進んだことも表していた。

ダットサン240Z(日産フェアレディZ/1969〜1973年/北米仕様)
ダットサン240Z(日産フェアレディZ/1969〜1973年/北米仕様)

TR6は、ドライビング・ファンに対して完全にファオーカスされている。古くからのピュアな興奮を求めるドライバーにとっては、素晴らしい内容といえた。

240Zは、スポーツカーで日常の自動車利用のすべてをまかないたいと考える、現代的なドライバー向け。実用性もないがしろになっていない。1980年代に登場した後継モデルは、運転の魅力を若干失った。だが、普段使いとの親和性は一層高かった。

インテリアを比べると、両車の違いが色濃く表れている。240Zは北米のトレンドを掴んでいた。カウルの付いたメーターにカーブを描くダッシュボード、スイッチの付いたセンターコンソールなどは、C3型のシボレーコルベットを連想させる。

エアベントが並んだ使い勝手の良いベンチレーションに、手の届きやすい場所にあるラジオ、座り心地の良いシート、広い荷室など、日本車らしいソツのなさもある。ボディサイズは現代の基準では小さいものの、1970年代当時も小さすぎることはなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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