ブランド大変革のEV SUV ジープ・アベンジャーへ試乗 欧州に向け新開発 航続408km 後編

公開 : 2022.12.12 08:26  更新 : 2023.02.19 08:43

全長4080mmとコンパクトなEVのジープが登場。欧州市場に向けて開発された新型の実力を、英国編集部は高く評価します。

しっかり考え抜かれたパッケージング

ジープアベンジャーのダッシュボード上には、10.25インチのモニターが2面据えられる。ドライバーの正面にはメーター用モニターがあり、中央にはインフォテイメント用タッチモニターが備わる。

エアコン用の実際に押せるハードスイッチが、その下に並ぶ。アンドロイド・オートとアップル・カープレイには、無線で対応するという。

ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー(欧州仕様)

独自の座面位置を採用することで、リアシート側の空間はプジョーe-2008やオペルモッカ・エレクトリックより余裕があるとジープは主張する。とはいえ、5シーターだが、大人が座るとゆとりは感じにくい。ファミリー層なら子供の定位置になるだろう。

さて、ステランティス期待のアベンジャーは、実際に運転してみても好印象なことに変わりはなかった。もちろん、一体感を伴ってワインディングを駆け回れるわけではないが、そもそもそんなクルマではない。

日常的な条件では感心するほど扱いやすく、スタイル重視のコンパクトSUVとは異なる個性も備えている。しっかり考え抜かれてパッケージングされた印象だ。

実際、車内空間は見た目以上に広々としており、四角いスタイリングのおかげでボディ四隅の位置を把握しやすい。運転席からの視認性にも優れており、ワイドすぎないから狭い車線でも大きな不安を抱くことなく導ける。

洗練された足まわり 不足ない悪路性能

ステアリングホイールは、切り初めに若干人工的な印象が伴うものの、適度な弾性があり正確性は充分。積極的にフロントノーズが向きを変え、コーナーではボディロールが抑制され、優れたグリップ力を発揮して狙ったラインをキープしてくれる。

試乗コースにはアスファルトが傷んだ区間も存在したが、乗り心地も良好だった。ホイールサイズが18インチと車格としては大きめで、若干の硬さも感取されたとはいえ、全体的にはしなやかと呼べる範囲だと思う。

ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー(欧州仕様)

不快な振動がドライバーへ届くことは殆どなく、欧州市場に合わせて開発されただけのことはある。このクラスのSUVとして、かなり洗練された足まわりだといっていい。

156psと26.4kg-mを発揮する駆動用モーターのパワー感に不足はなく、滑らかで活発に走る。0-100km/h加速は9.0秒となっている。

今回はシリアスなオフロードコースを運転する機会はなかったが、ショベルカーで削られたような深い凹凸が連続する悪路へ挑んでみた。路面の不整を、アベンジャーは見事に処理してみせた。

急な下り坂に備えて、速度を一定に保てるヒルディセント・コントロールも実装されている。前輪駆動ながら、現実的にユーザーが遭遇するであろう悪路へ不満なく対応できる能力を備えるようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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