出発準備に数時間 マーシャルSクラスへ試乗 1925年式の蒸気機関ロードローラー

公開 : 2023.01.09 08:25

時代を超えた機械としての美しさ

単気筒のピストンが前後へ動く音に、石炭が燃える熱、ボイラーやグリス、オイルが発する臭い。回転する丸出しのギア。五感に様々な刺激が伝わる。過多に思えるほど。これほどメカニズムを直接的に感じ取れる乗り物は、間違いなく限られる。

時間の経過とともに、操縦には慣れることができた。ところが、燃焼室のことを忘れていた。蒸気が弱くなっている。現役当時は、操縦者が2名一緒だったことも理解できる。

マーシャルSクラス(1925年/英国仕様)
マーシャルSクラス(1925年/英国仕様)

見た目は至ってノスタルジック。マーシャルSクラスで最大の特徴だろう。クルマ好きでなくても、近寄って観察したくなるはず。単に古いというだけではない。時代を超えた、機械としての美しさが存在していると思う。

動かない状態とは異なり、実際に走る蒸気機関のロードローラーは、強烈な印象を与えてくれる。筆者の祖父もマーティンのお爺さんも、天寿をまっとうしようとしていた時、最後に目にしたいと考えた乗り物はマーシャルSクラスだった。

お葬式でも使用された。新しいバッテリーEVが、そんな存在になるとは考えにくいなと、顔をススで汚しながら感じ入った体験だった。

マーシャルSクラス(1925年/英国仕様)のスペック

英国価格:5万ポンド(約830万円/現在)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:6.4km/h
0-100km/h加速:−
航続距離:16km
CO2排出量:−
車両重量:1万2750kg
パワートレイン:シングルピストン蒸気機関
使用燃料:石炭
最高出力:5ps
最大トルク:−
ギアボックス:2速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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