BMW M 次世代EVに「神の手」採用 四輪駆動で高度なドルクベクタリング実現

公開 : 2023.01.17 06:25

BMW Mが開発中の高性能EVに、4基のモーターを使ったトルクベクタリング技術の採用が明らかになりました。M2クーペの次世代モデルとも考えられる開発中の車両について探りました。

次世代M2クーペ? 高性能のEVプロトタイプ

BMW初のEVスポーツカーの開発が進んでいる。エンジニアが目指すのは、内燃機関廃止後も、Mモデル特有のダイナミックなキャラクターを実現することだ。

BMWは昨年、謎のEVプロトタイプの画像を公開し、「ミリ秒単位」で「極めて正確」な出力伝達が可能なクアッドモーター、四輪駆動システムを搭載していることを明らかにした。

BMW Mは4モーター搭載の高性能EVの開発に取り組んでいる。(画像は予想レンダリングCG)
BMW Mは4モーター搭載の高性能EVの開発に取り組んでいる。(画像は予想レンダリングCG)    AUTOCAR

最近発表されたM2の次世代モデルには、同様の技術が搭載される見込みである。M2クーペの発表会で、AUTOCARのインタビューに応じたBMW Mのフランク・ヴァン・ミールCEOは、開発中の四輪駆動EVについて、F90世代(6代目)のM5 xドライブを手本にすることをほのめかした。

M5史上初めて四輪駆動システムを導入したM5 xドライブは発表当時、そのことで物議を醸した。現在では、優れたハンドリングを持つスポーツセダンとして高く評価されている。

「その秘密は、リアのディファレンシャルだけでなく、前後ディファレンシャル、DCS(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)システムなど、すべてを制御するセントラル・コントローラー、またはセントラル・ロジックにあります」

これら複数の機能を単一のシステムで管理することは、「4つのシステムが協調してクルマを走らせる」ために非常に重要だ。

BMWはこのECUを「神の手」と呼んでいる。ガソリンエンジンと電気モーターの出力をバランスさせ、ハンドリングを向上させる高度なトルク・ベクタリング。これを可能にする手段として、i8に初めて搭載されて以来、さまざまなMモデルに展開されている。

「さらに一歩進んで、開発車両のように4基の電気モーターを持つEVの場合でも、同じロジックで制御してMらしく走らせることができます。そのため、より可能性が広がるのです」とヴァン・ミールCEOは語る。

また、フロントアクスルを駆動させることで、減速時のエネルギー回生をより高めることができ、大きなメリットをもたらす可能性があるとした。EVのMモデルが従来車とどのように差別化されるかはまだ不明だが、最上級のiX M60と次期i7 M70はすでに600ps級の出力と加速力を実現しているため、次世代スポーツモデルには独自のダイナミック特性を持たせようとするはずだ。

興味深いことに、BMWが昨年公開したEVプロトタイプは、複数のモデルを組み合わせたものだ(4シリーズ・グランクーペのボディとM3のフロントおよびリアエンドが特徴的)。このことから、既存のi4やi7を強化したものではなく、広範囲にわたって改良を施した高度なM専用モデルになると予想される。

しかし、ヴァン・ミールCEOは「すべてを準備するには何年もかかるため、開発はかなり早い段階から始める必要がある」と述べており、実現にはまだ時間がかかると思われる。

この次世代EVは、現行のMモデルの後継となる可能性もあり、今日のM2の流れを汲むコンパクトクーペという、興味深いテーマが見え隠れしている。コンパクトなボディ、低重心、そして重量配分を活かしたハンドリングマシンになるだろう。

ヴァン・ミールCEOはM2の価格(約6万ポンド、日本円換算で約940万円)を例に挙げ、「将来的にはこの価格帯のクルマも提供したい」と述べた。

発売がまだ何年も先になることは間違いないが、電動化時代にもBMW M特有の走りを継承してくれることを期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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