こういったシチュエーションではマクラーレンのターボ・ラグやフラット過ぎるシートが欠点となって浮き彫りになる。またブレーキングを適切なタイミングでキメていかないと、テール・ハッピーと過度なアンダーステアのオンパレードになってしまうので注意が必要だ。

そこさえ理解して、最も適切なタイミングでブレーキングと操舵をこなせば、マクラーレンは1mmもずれることなくコーナーを切り抜けていく。ハンドリング・バランスこそ全てと訴えるつもりは無いけれど、特に峠道を攻めこむ場合などはとても大切であるということを、全く異なるキャラクターを持つ2台を乗り比べて感じた。

短く纏めるとしたら、アストンは機敏で緊張感がある。マクラーレンはクリーンで寛大といったところだろうか。

またヴァンテージSの良いところは、高回転時のエンジン・ノイズにもある。とにかくドラマティックなのだ。平日は忙しくレンジローバーで駆けまわり、晴れた休日の、アポイントメントが何も無い日に、アストンのドラマに浸る。こんな使い方が良いのでは無いだろうか。

では結論。あるいは文面から勝敗が想像できた向きも多いかも知れない。

確かにマクラーレンの実力はかなりのものだけれど、アストンの熱情的なドライビングを味わった後では些か冷たすぎる印象がある。

反面アストンは、マクラーレンほど完璧主義ではないのだけれど、その分、どのような事が起こっているのかを完全に把握することができる、ある種の人間味があるのだ。

理由なんか何もなくとも、ただV12ヴァンテージSのシートに身を収めて、どこまでもひた走って行きたい。そう思わせてくれたことが、今回アストンが勝利した理由だ。

(マット・プライヤー)

アストン・マーティンV12ヴァンテージS

価格	£138,000(2,150万円)
最高速度	330km/h
0-96km/h加速	3.9秒
燃費	6.8km/ℓ
CO2排出量	343g/km
乾燥重量	1665kg
エンジン	V型12気筒5935cc
最高出力	573ps/6750rpm
最大トルク	63.2kg-m/5750rpm
ギアボックス	7速ロボタイズ

マクラーレンMP4-12C

価格	£130,000(2,270万円)　新車価格：£168,000ポンド(2,930万円)
最高速度	328km/h
0-100km/h加速	3.3秒
燃費	8.6km/ℓ
CO2排出量	279g/km
乾燥重量	1434kg
エンジン	V型8気筒3799ccツインターボ
最高出力	625ps/7000rpm
最大トルク	61.1kg-m/3000rpm-7000rpm
ギアボックス	7速デュアル・クラッチ・オートマティック