幻の横3人掛けフェラーリ、知ってる? 「365Pベルリネッタ・スペチアーレ」誕生の背景

公開 : 2023.02.14 12:36  更新 : 2023.02.14 12:38

漂う高貴な趣味性

アニェッリの365Pにはサイドにブルーのラインが走っている。これは後年のフェラーリテスタロッサスパイダーフィアット・パンダ・など、彼による他の特注車の一部にもみられる、いわばシンボルである。

歴史をひもとけば、「ディノーネ」公開前年である1965年にフィアットはフェラーリと正式に提携を調印している。

アニェッリの元所有車と異なり、パリ・モーターショー出品車にはスポイラーが付加されていない。2022年5月イタリア・コモ「コンコルソ・ヴィラ・デステ」で。
アニェッリの元所有車と異なり、パリ・モーターショー出品車にはスポイラーが付加されていない。2022年5月イタリア・コモ「コンコルソ・ヴィラ・デステ」で。    Akio Lorenzo OYA

だがそれ以前から両社の関係はあった。アニェッリ個人も、それ以前に複数のフェラーリを所有している。

生前のアニェッリはルノワール、マティスそしてバッラといった、近代絵画を中心としたコレクターとしても知られ、今日でも一族が運営するトリノの絵画館で鑑賞できる。

あの高らかに鳴り響くエンジンサウンドと獰猛なエグゾーストで知られるブランドとは思えない、気品漂うフェラーリたちからは、美術コレクション同様、彼の高貴な趣味性を見る者に伝えるのである。

記事に関わった人々

  • 大矢アキオ

    Akio Lorenzo OYA

    在イタリアジャーナリスト。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で比較芸術学を修める。イタリア中部シエナ在住。今思えば最初に覚えたイタリア語は「ルーチェ」「カリーナ」「クオーレ」、フランス語は「シャルマン」と絶版車名ばかり。NHK語学テキストに長年執筆。NHK「ラジオ深夜便」にも出演中。「シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザインの軌跡」(三樹書房)をはじめ著書訳書多数。

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