日産エクストレイル 詳細データテスト 動力性能と操縦性には満足 静粛性と低速での乗り心地は要改善

公開 : 2023.03.04 20:25

走り ★★★★★★★★★★

先代エクストレイルをテストした2014年には、小排気量ディーゼルが大人気だった。ハイブリッドドライブトレインのおかげで、現行モデルはパワーが大いに高まってはいるが、大きな駆動用バッテリーのせいで、重量も大幅に増している。公称重量は1886kg、テスト車の実測値は1947kgだった。

この重量にもかかわらず、e-4ORCE仕様のエクストレイルは、0−97km/hを6.6秒で駆け抜ける。これは、9年前の先代ディーゼルより4.6秒も速い。さらにいえば、競合するハイブリッドの多くも凌いでいる。トヨタ・ハイランダーとキア・ソレントは8.5秒、キア・スポーテージは7.3秒だった。スコダ・コディアックvRSの5.9秒にも、さほど後れを取っていない。

EVのような運転感覚をもたらすe−パワーは、静かで、強力なパワーを瞬時に引き出せる。3気筒エンジンが存在感を示すのは、フルスロットルに近い操作をした場合くらいだ。
EVのような運転感覚をもたらすe−パワーは、静かで、強力なパワーを瞬時に引き出せる。3気筒エンジンが存在感を示すのは、フルスロットルに近い操作をした場合くらいだ。    MAX EDLESTON

明らかに、ハイブリッドのエクストレイルは十分なパフォーマンス以上のものを提供してくれる。より重要なのは、そのデリバリーだ。ハイブリッドはしばしば、この点でしくじる。問題になりがちなのは、CVTの唸りや、エンジンとモーターの連携のぎこちなさだ。日産に言わせれば、e−パワーはドライビングフィールがEVのようで、しかも充電の必要がない、ということになる。

実際、エクストレイルはEVにかなり近く、その点ではトヨタのシステムより楽しませてくれる。四輪とも電動なので、パワーは瞬間的に発生し、リニアで、非常に静かだ。バッテリーの電力を絶やさないために、エンジンは頻繁にかかるが、遮音がしっかり効いているようで、気になることはないだろう。

とはいえ、完全にEV並みとはいかない。たとえば75%以上のパワーを出したり、強い加速を繰り返したりすると、十分に発電し、充電量も保つため、エンジンがかなりハードに回るようになってくる。そうなると、高いエンジン回転がキープされるようになるので、キャビン内でも音が気になってしまう。

とはいえ、さほど不快なノイズではない。また、残り25%が必要になる機会がほとんどないほどパワフル。床までペダルを踏み込むと、1秒ほどの間をおいてフルパワーを叩き出すが、ほとんどの場合、80%でも多すぎるくらいだ。

もうひとつ、このエクストレイルのメカニカルレイアウトがもたらすのは、EVのような回生ブレーキだ。標準状態では、スロットルペダルを抜いても回生は弱めだ。走行モードセレクターでBモードを選ぶと、はっきりわかるくらい効きが増し、e−ペダルのボタンを押すとさらに強くなる。

かなり直観的ではあるが、それでも完全制止するにはブレーキペダル操作が必要だ。ありがたいことに、ペダル踏力に対する効き方がリニアなので、スムースなブレーキングが楽にできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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