専用の吸排気系で585ps メルセデスAMG SL 63へ試乗 ホットロッドでグランドツアラー

公開 : 2023.03.22 08:25

SLを気に入らないクルマ好きはいない

コンフォート・モードを選択するとサスペンションのしなやかさが増すが、荒れた路面では、タイヤへの細かな入力に対し若干の硬さが垣間見られる。滑らかな高速道路との相性が良いようだ。

同時に、ゆったりとボディが上下動するような浮遊感も伴う。恐らく、ソフトなアンチロール・システムの制御によるものだろう。

メルセデスAMG SL 63(英国仕様)
メルセデスAMG SL 63(英国仕様)

英国郊外の流れの速い一般道では、スポーツ・モードがピッタリ。乗り心地の落ち着きを失うことなく、より引き締まった姿勢制御が得られる。SL 63の身のこなしが敏捷になり、挙動の変化をドライバーが予想しやすくなる。

一方、スポーツ+モードは少々ハード過ぎると感じた。滑らかな路面でシリアスに駆け回ろうというシーンでない限り、選ぼうと考えるドライバーは少ないだろう。

状況に適したドライブモードを選べば、SLの運転は非常に楽しい。春めいた3月に、必要以上のエネルギーを即座に生み出すV8エンジンを積んだ2+2のロードスターを、気に入らないクルマ好きはいないかもしれない。

操縦性のバランスは好ましく、トラクションは絶大。車重は1895kgあるにも関わらず、反応は自然でダイレクトだから、クルマとの適度な一体感が得られる。

強められたグランドツアラーとしての能力

従来のSLは、ドライバーを満たしてくれる、乗りやすいコンバーチブルだった。強力なエンジンを選べば、訴求力のあるホットロッド、チューニングカーのような印象も楽しめた。哲学を理解していれば、素晴らしいメルセデス・ベンツといえた。

最新のSLは、グランドツアラーとしての能力を強めている。外界との隔離性が、少々伴わないとしても。運転支援システムも多機能で、長距離の披露を軽減してくれる。

メルセデスAMG SL 63(英国仕様)
メルセデスAMG SL 63(英国仕様)

さらに585psのSL 63の場合は、チューニングカー的な印象も濃くなった。何しろ、最高速度は315km/hに達する。

筆者は、新しいSLも好きだ。むしろ、大排気量のV8ツインターボエンジンを搭載しているだけでありがたい。完璧ではないかもしれないが、成功作だと思う。

メルセデスAMG SL 63(英国仕様)のスペック

英国価格:17万2655ポンド(約2779万円)
全長:4705mm
全幅:1915mm
全高:1359mm
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.7-8.0km/L
CO2排出量:282-294g/km
車両重量:1895kg
パワートレイン:V型8気筒3984ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:585ps/5500-6500rpm
最大トルク:81.4kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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