2.2Lにボアアップで250馬力 ジェンセン・ヒーレー 一緒に過ごして半世紀 後編

公開 : 2023.04.15 07:06

現役時代はダットサン240Zと伍したジェンセン・ヒーレー。1人のオーナーが半世紀近く大切にする1台を、英編集部がご紹介します。

キャブレターから燃料インジェクションへ

エンジンがリビルドされたジェンセン・ヒーレー。「2.2Lになりトルクが太くなりました。0.78:1のギア比の5速に入れても、充分に加速できますよ」。ロータス907ユニットの第一人者である、マイク・テイラー氏が説明する。

初期のエンジンが抱えていた、シリンダー間で圧縮が抜ける問題も解決できた。バランス取りした軽量ピストンとコンロッドも組まれるが、オイルサンプはオリジナルのままだという。

ジェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)
ジェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)

同時にトランスミッションも交換され、大きいトルクを受け止めるべく、クロスメンバーが追加してある。クラッチケーブルは、ロータスの部品を加工して利用している。

プロペラシャフトとスピードメーター用ケーブルも、マイクが用意したもの。クラッチペダルの位置が変更され、インプットシャフトにも手が加えられた。

実はこのトランスミッションの載せ替え用に、彼は2800ポンド(約45万円)でコンバージョン・キットを提供している。既に10台分が売れたという。

乗りやすさを求めたオーナーのロバート・ヒックマン氏の要望へ応えるように、キャブレターから燃料インジェクションへアップグレードもされた。これも、3500ポンド(約56万円)でキット化されている。

気筒毎に点火コイルが組まれ、ディストリビューターは不要に。オルタネーターは大容量化され、スターターはギア駆動で効率を高めた。軽量なフライホイールへ交換され、鋭いコーナリングに備えてガソリンタンク内部も改良を受けている。

数枚の補助メーターが並ぶダッシュボード

ロバートは足回りへ手を加えるつもりはなく、180馬力程度で充分だと考えていたが、最終的に250馬力へ上昇。ステアリングラックとブレーキも、アップグレードされることになった。

今後、さらに年齢を重ねるロバートのために、電動パワーステアリングの追加も可能らしい。この状態へ仕上げるまでに、半年を費やしたそうだ。
アルミホイールはオリジナルをマイクが探し出し、細身のピレリが組み合わされた。13インチの185/70というサイズがラインナップされる、クラシックカー向けのCN36タイヤを履く。

ジェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)
ジェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)

新車時から、味気ないとか特徴が薄いと批判されてきたジェンセン・ヒーレーのスタイリングだが、確かにフロントマスクは個性的とはいえないだろう。ホイールアーチの隙間も大きい。それでも、斜め後方からの容姿には魅力を感じる。

大きなリアデッキの内側には、余裕のある荷室が広がる。ヒルマン・ハンターのものが流用されたテールライトの収まりは悪くない。

全体がブラックで仕立てられたインテリアも、造形的には目立った特徴がない。オースチン・ヒーレー3000の後継モデルとして、新しさが狙われているように感じる。空間は広く、操作系のレイアウトも考えられている。

ダッシュボードには、電圧や油圧の補助メーターが並ぶ。警告灯だけで済まされる時代が訪れていたなかで、スポーティに感じたドライバーは多かったはず。ただし、シートベルトの警告灯は付いている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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