ノイズと乗り心地が惜しい マツダCX-60 3.3 e-スカイアクティブDへ英国試乗 操舵性は◎

公開 : 2023.04.15 08:25

マツダの新世代ラインナップで重要な位置にあるCX-60。直6ディーゼルHVの仕上がりを、英国編集部が確かめました。

56.0kg-mのトルクを実現しつつ、燃費は19.2km/L

マツダには変わって欲しくない。小さく軽いMX-5(ロードスター)で絶滅しかけていた2シーター・オープンを救い、ロータリーエンジンを積んだグループCマシンでル・マン24時間レースでの優勝を掴んだ、大きな功績を残す自動車メーカーだ。

2023年もマツダは果敢に挑戦を続けている。多くの自動車メーカーがダウンサイジング化を図り、電動化技術を積極的に採用している。しかし、新しいCX-60に搭載されるのは、3.3Lという大排気量の直列6気筒ディーゼルターボだ。ハイブリッドではあるが。

マツダCX-60 3.3 e-スカイアクティブD AWD(英国仕様)
マツダCX-60 3.3 e-スカイアクティブD AWD(英国仕様)

近年では珍しい新開発パワートレインといえるが、マツダは明確な理由を掲げて提供している。周囲には流されないという、同社独自のマインドもあるとはいえ。

その1つは、CX-60が販売されるのは欧州市場だけでないこと。世界の地域や国で、自動車に掛けられている規制は異なるためだ。

加えて、3.3L 6気筒ディーゼルターボは2.0L 4気筒と同等以上の仕事をこなせつつ、日常的な利用環境では負荷を抑えられ、温度を低く留めておけるという。つまり燃費を伸ばせるのだ。

高度なピストン設計と圧縮着火技術を採用することで、熱効率は40%を超えるとマツダは主張する。実際、56.0kg-mという太いトルクを実現しつつ、19.2km/Lの燃費を達成している。

走行時のCO2の排出量も、139g/kmと褒められる。車重が1950kgもある、大きなSUVでありながら。

良好なシャシーバランスとステアリング

ちなみに、アルファ・ロメオ・ステルヴィオが搭載する2.2L 4気筒ディーゼルの場合、燃費は約15%低く、CO2の排出量は20g/kmほど多い。それでいて、最大トルクでは届いていない。この関係性は、BMW X3の4気筒ディーゼルでも変わらない。

理論上は、マツダの主張を理解できる。ただし、すべてが優位というわけではない。特に気になるのが冷間時のマナー。エンジンが温まるまでは、数世代前の大型バスのようにカラカラとうるさい。

マツダCX-60 3.3 e-スカイアクティブD AWD(英国仕様)
マツダCX-60 3.3 e-スカイアクティブD AWD(英国仕様)

内部温度が上昇すると、ボリュームは小さくなる。流れの速い英国郊外の道で太いトルクを放てば、ゆとりあるたくましさで豊かな気持ちになれる。それでも、BMWの洗練されたユニットでは聞こえてこない、ディーゼルらしいノイズが車内へ響いてくる。

オプションをいくつか選ぶと、英国価格が5万ポンド(約805万円)を超えてしまうSUVだと考えれば、走行時の洗練性にはもう少しを求めたい。ロードノイズなどは適度に遮断できているのだが。

そのかわり、シャシーのバランスとステアリングホイールの感触が補う。このクラスとしては優れており、マツダらしい特性だと思う。郊外の道をハイペースで流したとき、CX-60以上に滑らかにラインを縫える競合モデルは少ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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