1960年代の英国へ衝撃 ローバーP6 英国版クラシック・ガイド 上級サルーンをリード 後編

公開 : 2023.05.28 07:06

前衛的な設計と容姿で高評価を得た、ローバーの主力モデル、P6。日本へも少数が輸入されたサルーンの魅力を、英編集部が振り返ります。

耐久なエンジン この年代らしい整備は必要

ローバーP6のエンジンは、直列4気筒でもV型8気筒でも高耐久。定期的なメンテナンスを怠らなければ、リビルドせずに16万km以上は耐える。

エンジンオイルの過度な消費や漏れ、ベアリング・ノイズなどがないか確かめたい。V8エンジンでパワー不足に感じられるなら、カムまわりの摩耗が原因であることが多い。

ローバーP6(1963〜1977年/英国仕様)
ローバーP6(1963〜1977年/英国仕様)

ラジエターは、内部の詰まりや腐食、クーラントの状態を確かめる。特にV8エンジンではクーラントが古くなると内部腐食が進み、ヘッドガスケットへダメージを与えることがある。

ヘッドはアルミニウム製で、無鉛ガソリンにも対応できる。エタノール混合ガソリンを給油する場合は、燃料系統のゴムやナイロン部品は交換が必要。2000TCや2200TC、V8エンジンの場合、ガソリンは100オクタン以上の無鉛ハイオクを用いたい。

1万6000km毎でのリア・サスペンションのド・ディオン・チューブ・フルード交換と、3万2000km毎でのタイミングチェーン用テンショナー・フィルターの掃除をするのが理想。現代のメカニックは、必要性を理解していない人も少なくない。

ドアのヒンジは球面ジョイントを用いており、グリースポイントは1か所のみ。ド・ディオン・チューブのラバー部品が破損すると、内部に砂が入り摩耗が進む。状態が怪しければ、早めの交換が得策だろう。

上級サルーンをリードするポジションにあった

オーバー・エンジニアリング気味だったP6では、初期型では軽さと性能を両立させたダンロップ社のディスクブレーキと、よく効くハンドブレーキが装備されている。1966年からは、大型のサーボを採用したガーリング社製へ変更。パッドも強化された。

同時期に電装系はマイナスアースへ変更され、バックライトが2灯へ増やされている。1968年からは、クロスフロー・ラジエターが搭載されるようになった。

ローバーP6(1963〜1977年/英国仕様)
ローバーP6(1963〜1977年/英国仕様)

快適な乗り心地で製造品質の高かったP6 2000は、1960年代の英国では、上級サルーンをリードするポジションに位置していた。動的な水準は、同時期のライバルとは一線を画していた。

生産は1977年まで続けられたが、デビッド・ベイチュ氏が手掛けた美しいスタイリングへは、最後まで大きな手は加えられなかった。ボディシェルの構造的にフェイスリフトは難しくなかったものの、晩年まで古びて見えることはなかった。

しなやかなサスペンションでボディロールは小さくないものの、不安を誘うほどではないだろう。運転席からの視界に優れ、操縦系のレイアウトも好ましい。現在でも心地良いドライブを楽しめる、実用的なクラシックサルーンだといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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