快適性と操縦性をバランス ポルシェ・カイエン E-ハイブリッドへ試乗 3代目がマイチェン

公開 : 2023.05.28 08:25

ポルシェらしくないブレーキペダルの感触

今回はベースグレードのカイエンにも試乗することができたが、筆者が選ぶならこちらにするだろう。英国価格は6万7400ポンド(約1085万円)で、お手頃とは呼べないものの、近年の価格上昇を踏まえるとお値打ちなポルシェに思える。

プラグイン・ハイブリッドのカイエン E-ハイブリッドは、駆動用モーターだけでの走行や燃費が魅力といえるが、コーナリング時は増えた車重を実感してしまう。このブランドへ期待する、操縦の研ぎ澄まされた正確性では及ばない。

ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド(欧州仕様)
ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド(欧州仕様)

さらにカイエン E-ハイブリッドで気になったのが、ブレーキペダルの踏みごたえ。回生ブレーキと物理ブレーキとの融合が、完璧とは感じられなかった。

ペダルを傾けていくと、当初は回生ブレーキのみが動作するが、感触が薄くポルシェとしては驚くほど反応が曖昧だった。開発技術者へ確認すると、これを認識しているとのこと。回生ブレーキには多くの変数が絡み、一貫性を持たせることが難しいという。

タイヤのサイドウォールは、高さが5%増やされている。乗り心地で有利なだけでなく、路肩へ寄せる時、ガリ傷を恐れる度合いも軽減された。

快適性と操縦性のバランスの良さが強み

フェイスリフト後のカイエンで際立つ強みといえるのが、快適性と操縦性のバランス。ベースグレードでも、ツインバルブ・ダンパーとツインチャンバー・エアスプリングが組まれるエア・サスペンションを、1760ポンド(約28万円)のオプションで指定できる。

従来は、シングルバルブ・ダンパーとトリプルチャンバー・エアスプリングという組み合わせだった。これにより、減衰力の変化を一層正確に制御できるようになったという。標準仕様はスチールコイルだ。

ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド(欧州仕様)
ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド(欧州仕様)

その結果として、コーナリングは印象的なまでに滑らかでフラット。大きく重いボディを実感させないほど、素直な身のこなしを実現している。

この改良を受けたサスペンションが、今回のフェイスリフトで最大の目玉といえると思う。優れた動力性能や操縦性は従来どおり。快適性が向上し、BEV版が登場するまでの2年間は、ライバルとの競争力へ不足はないといえるだろう。

ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド(欧州仕様)のスペック

英国価格:7万6800ポンド(約1236万円)
全長:4918mm
全幅:1983mm
全高:1563mm
最高速度:254km/h
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:55.5-66.7km/L
CO2排出量:33-42g/km
車両重量:2425kg
パワートレイン:V型6気筒2995ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:21.8kWh
最高出力:470ps/5400-6400rpm(システム総合)
最大トルク:66.1kg-m/1400-4800rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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