ゴルフに代わるBEVへ フォルクスワーゲンID.3へ試乗 3年目の効果的アップデート

公開 : 2023.06.03 08:25

市街地で最も快適 急速充電能力は170kW

BEVらしく、ID.3は発進時から加速が鋭く滑らか。市街地で最も快適に運転できるように感じることも、以前から変わらない。柔軟で余力のあるパワートレインによって、流れの速い一般道でも心地よく運転できる。

駆動用モーターは静かに回転し、タイヤのロードノイズも小さい。高速域では風切り音が聞こえ出すが、クラスとしては平均的なレベルに留めている。

フォルクスワーゲンID.3 プロS(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.3 プロS(欧州仕様)

ステアリングホイールには、明確なフィードバックが伝わってこないものの、軽く回せ反応は正確。サスペンションの減衰力特性も優秀といえ、荒れた路面での不満ない乗り心地と、カーブでの落ち着いた姿勢制御を叶えている。

フロントタイヤのグリップ力も充分。挙動は予想しやすく、全体的な安心感がある。調子づいて攻め込むと、1933kgある車重を実感させられるが。

乗り心地はやや硬め。低速域で細かな入力が連続する区間では、落ち着きに欠くことがある。とはいえ、アスファルトが剥がれた穴を通過しても衝撃の角は丸められ、足さばきは熟成を増した印象。クラスの平均以上といえる。

回生ブレーキの強さは、5.3インチのメーター用モニター横のセレクターで調整できる。急速充電能力は、DCで最大125kWから170kWへ向上した。より短時間で、駆動用バッテリーを回復できる。

ゴルフに代わるハッチバックへ

正直なところ、フェイスリフト前のフォルクスワーゲンID.3は、開発が未完了の部分があったように思う。しかし2024年仕様では、内燃エンジンのゴルフに代わる、BEVのハッチバックへ仕上がったような印象を受けた。

確かに一部の課題は残されているものの、アップデートで実力と訴求力を高めたことは間違いない。ただし、ID.3 プロSの英国価格は4万2870ポンド(約690万円)。より安価なライバルは少なくなく、競争が楽になったとまではいえないだろう。

フォルクスワーゲンID.3 プロS(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.3 プロS(欧州仕様)

フォルクスワーゲンID.3 プロS(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万2870ポンド(約690万円)
全長:4261mm
全幅:1809mm
全高:1562mm
最高速度:161km/h
0-100km/h加速:7.9秒
航続距離:558km
電費:6.1-6.6km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1933kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:77.0kWh(実容量)
急速充電能力:170kW
最高出力:207ps
最大トルク:31.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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