【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#20 甲府でクアトロショック!!

公開 : 2025.10.10 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第20回は『甲府でクアトロショック!!』を語ります。

つまり優勝はオレだ!

秋田・男鹿半島への特攻ドライブのレポート中だが、今回は、先日開催された『スーパーカー・コレクション2025 in甲府城』に、大貴族号(筆者の先代マセラティクアトロポルテ)が参戦した模様をお送りする。

スーパーカー・コレクションに、何ゆえ我が4ドア・マセラティが展示されるのか。たぶん、1台ボロいクルマを並べることで、参加者の皆さんの優越感を満たすためだろう(推測です)。

スーパーカー・コレクション2025 in甲府城に、大貴族号こと筆者の先代マセラティ・クアトロポルテが参戦。
スーパーカー・コレクション2025 in甲府城に、大貴族号こと筆者の先代マセラティ・クアトロポルテが参戦。    佐藤亮太

しかし、今やクルマ趣味は、安ければ安いほど、ボロければボロいほどエラい。つまり優勝はオレだ! 勝負はついている。なんて気楽なんだろう。私は気楽に甲府へ向かった。

現地には、大貴族号の父、マイクロ・デポ代表のタコちゃん(岡本和久氏)夫妻が、心配のあまり来場。その他、フェラーリ関係の知り合いも、だいぶ見学に来てくれた。みんな、ボロいクルマが珍しいのだろう。

といっても大貴族号は、パッと見、決してボロくない。よく見りゃ右ドアモールは白サビだらけだが、それを除けば外装はピカピカ(内装はベタベタ)だ。今のところ故障もほぼ皆無。夏に入ってから、暑さのせい(?)でハザードが出なくなったが、ウィンカーが出ないのに比べれば屁でもない。

20年前に乗っていたマセラティ430(愛称:まるでだめ男)は、走行中にウィンカーが出なくなったことがあり、仕方なく窓から手信号で右左折を合図した。あの時、後続車はわかってくれたのだろうか。ウィンカーが出ないと困るけど、ハザードが出なくても特に困らないことは実証済みである。

芝生のど真ん中のベストポジションに鎮座!

こうして大貴族号は、甲府城の芝生のど真ん中のベストポジションに鎮座した。まさに主役。しかし、パッと見は特にボロくないせいか、ほとんど人は集まらない。私も大貴族号を放置し、タコちゃんと他の参加車両を見学した。

オレ「タコちゃんはどれが一番好き?」

大貴族号など足元にも及ばないエレガンスを発散していたビトルボE。
大貴族号など足元にも及ばないエレガンスを発散していたビトルボE。    清水草一

タコちゃん「私はもちろん、このビトルボEですヨ」

タコちゃんのお客さんのビトルボEはピッカピカ。大貴族号など足元にも及ばないエレガンスを発散させていた。

私は常々、先代クアトロポルテのデザインはウルトラ素晴らしい! ケン奥山の最高傑作! と確信してきたが、こうして比べて見ると、デザインの時間的耐久性は、シンプルかつ端正なビトルボ系のほうが上だったのかもしれない。ショック!

オーナーMさんの好意で、エンジンをかけさせていただいたが、キャブ仕様のせいか、『まるでだめ男』よりプリミティブな荒々しさがあり、現代的な精度ビンビンな大貴族号のエンジンに比べても、マニアック度ははるかに上だった。

往年のマセラティV6ツインターボなんて、フェラーリV8の足元にも及ばないと確信していたが、カーマニア的見地からすると、明らかに負けていた。ダブルショック!

いや、いいんだ。愛は比べるものじゃない、感じるものだ。俺は大貴族号がかわいい。ベタベタした内装も、ガツンと突き上げるサスもかわいい。ビトルボ系なんてみんなに愛されるキャラけど、先代クアトロポルテは超絶不人気。俺が愛さなかったら誰が愛する! うおおおおお!

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 撮影

    佐藤亮太

    Ryota Sato

    1980年生まれ。出版社・制作会社で編集経験を積んだのち、クルマ撮影の楽しさに魅了され独学で撮影技術を習得。2015年に独立し、ロケやスタジオ、レース等ジャンルを問わない撮影を信条とする。現在はスーパーカーブランドをはじめとする自動車メーカーのオフィシャル撮影や、広告・web・雑誌の表紙を飾る写真など、様々な媒体向けに撮影。ライフワークとしてハッセルブラッドを使い、生涯のテーマとしてクラシックカーを撮影し続けている。佐藤亮太公式HPhttps://photoroom-sakkas.jp/ 日本写真家協会(JPS)会員
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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